バッハ,J.S. Bach,J.S.

■ブランデンブルク協奏曲
1717年にバッハは,ケーテンという町で楽長に任命されたのですが,この時期に教会に関係のない器楽作品をたくさん書いています。ブランデンブルク協奏曲は,そういう作品の代表です。この協奏曲集の演奏技術の難しさを見る限りでは,このケーテンにあった楽団の演奏レベルは非常に高かったものと思われます。

この協奏曲集は,ブランデンブルク辺境伯クリスティアン・ルートヴィッヒに献呈されたため「ブランデンブルク協奏曲」と呼ばれていますが,辺境伯のために特別に作曲されたものではなく,このケーテンの楽団用に作曲したものの中から6曲選んだものと考えられています。

6曲それぞれ編成が違いますが,基本的な構造は,ヴィヴァルディの確立したバロック音楽の協奏曲形式で作曲されています。つまり,
(1)曲の形式:急-緩-急(例外は第1番)
(2)第1楽章と第3楽章の基本形式:リトルネッロ形式
というパターンです。リトルネッロ形式というのは,トゥッティ(T)とソロ(S)が交替して登場する形式です。Tの部分は,同じものが何回も登場しますが,これをリトルネッロといいます(リトルネッロというのは英語ではリフレーンということになります)。Sの方では,独奏楽器が通奏低音の上でいろいろな旋律を演奏します。

6曲のパターンを表にすると次のようになります。
番号 第1楽章 第2楽章 第3楽章 第4楽章 独奏楽器
第1番
BWV1046
1718-19年
ヘ長調
2/2アレグロ
*SとTの旋律的対比は不明確
ニ短調
3/4
*ホルンは休み。パッサカリア風
ヘ長調
6/8アレグロ
*SとTの対比は明確。中間部のアダージョが目立つ
ヘ長調
3/4メヌエット
(メヌエット−トリオ1-メヌエット−ポロネーズ−メヌエット−トリオ2−メヌエット)
オーボエ*3,ファゴット,狩猟ホルン*2,ヴァイオリン
*狩猟カンタータと関係あり。もっとも大規模
第2番
BWV1047
1718-19年
ヘ長調
2/2アレグロ
ニ短調
3/4アンダンテ
*ソロのみ。対位法的
ヘ長調
2/4アレグロ・アッサイ
*フーガ
  リコーダー,オーボエ,トランペット,ヴァイオリン
*高音の続出するトランペットは演奏が非常に難しい
第3番
BWV1048
1718年
ト長調
2/2アレグロ
(アダージョ
2つのフリギア終止の和音のみ。即興演奏されることも多い)
ト長調
12/8アレグロ
*ジーグ的なスピード感
  [ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ]
*ソロ楽器の区別なし
第4番
BWV1049
1719-20年
ト長調
3/8アレグロ
*1楽章が3拍子なのはこの曲だけ
ホ短調
3/4アンダンテ
*リトルネッロ
ト長調
2/2プレスト
*フーガ+リトルネッロ
  リコーダー*2,ヴァイオリン
*ヴァイオリン協奏曲的
第5番
BWV1050
1720-21年
ニ長調
2/2アレグロ
*長大な,チェンバロのカデンツァあり
ロ短調
4/4アフェットゥオーソ
カノン的模倣
ニ長調
2/4アレグロ
*ジーグ風の主題。フーガ+リトルネッロ
  フルート,ヴァイオリン,チェンバロ
*チェンバロ協奏曲的
第6番
BWV1051
1718年
変ロ長調
2/2アレグロ
変ホ長調
3/2アダージョ・マ・ノン・タント
変ロ長調
12/8アレグロ
*ジーグのリズム
  [ヴィオラ,ヴィオラダガンバ,チェロ]
*ソロ楽器の区別なし
(2001/10/16)