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種類 |
曲名・テキスト |
編成 |
解説 |
15 |
コラール |
われらを救いたもうキリストは |
4部合唱,管弦楽 |
●ピラトの審問
フリギア旋法。M.ヴァイセ作のコラール"Christus, der uns selig mach"の第1節。 |
16a〜e |
レチタティーヴォと合唱 |
ヨハネ伝18-26〜36 |
福音史家,イエス,ピラト,通奏低音
4部合唱,管弦楽 |
このピラトの審問の部分がヨハネ受難曲の中心をなすと言われています。ここでも群集の合唱が重要な役割を果たしています。
イエスに対してどういう訴えを起こすのか?というピラトの問いに対し,ユダヤ人の群集は「この人が悪事をはたらかなかったら,あなたに引き渡すことはしなかった」と憎悪を爆発させるように歌います。半音階的な動きが特徴的です。2回目の合唱では,さらにエキサイトしている様子を描いています。
最後にイエスは「私の国はこの世のものではない。もし私の国がこの世のものであれば,私に従っている者たちは,私をユダヤ人に渡さないように戦ったであろう」と「戦い」という言葉をメリスマで強調して歌います。 |
17 |
コラール |
ああ大いなる王よ,いかなる時にも大いなる汝の |
4部合唱,管弦楽 |
.第3曲が移調されたものです。同じコラールの第8〜9節です。前曲の最後の部分の「戦い」という言葉に誘発されて歌われます。 |
18a〜c |
レチタティーヴォと合唱 |
ヨハネ伝18-37〜40 |
福音史家,イエス,ピラト,通奏低音
4部合唱,管弦楽 |
「イエスでなしにバラバを釈放せよ」と群集が歌う場です。この合唱は,第2曲と同じものです。
その後,「ピラト,イエスを引き据えて,うちで打たせた」と福音史家が歌う部分は,メリスマを用いて「むち打たせた(geisselte)」という語を強調し,長く大げさに歌われます。 |
19 |
アリオーソ |
とくと見つめよ,わが魂よ |
バス,ヴィオラ・ダモーレI・IIまたはリュート[またはオルガンあるいはチェンバロ],通奏低音 |
バッハが通奏低音としてリュートを指定した数少ない曲です。弦楽器も弱音器を付けて演奏しているので,たそがれ時の静けさを思わせる,独特の雰囲気を持った曲となっています。 |
20 |
アリア |
心して思いはかれ,血に染みたる彼の背の |
テノール,ヴィオラ・ダモーレI・II,通奏低音 |
拷問にかけられるイエスを取り扱う曲です。曲全体に「むち打ち」のリズム音型が広まります。アーチ型のメロディ・ラインは歌詞に出てくる虹を思わせるところがあります。 |
21 |
レチタティーヴォと合唱 |
ヨハネ伝19-2〜12 |
福音史家,イエス,ピラト,通奏低音 4部合唱,管弦楽 |
群集の合唱が「ユダヤ人の王,万歳」とふざけるような調子で歌います。フルートとオーボエの急速に下降する音型もその雰囲気を伝えます。
その後,「十字架につけよ」の合唱になります。不協和音の響き,熱狂的な反復,「タン,タタ」という執拗なリズムの繰り返しなどから命令的な要求感が出てきます。
続く「私たちには律法があります」の合唱では,対照的に整然ととしたフーガとなり,いけにえを要求します。ピラトはイエスを放免することを望むのですが...。 |
22 |
コラール |
汝の捕らわれしゆえに,神の御子よ |
4部合唱,管弦楽 |
ポステルの受難詞に基づくもの。旋律はH.シャインの作。事件に満ちた場を閉じるこの曲は,全曲の中核を成す重要な曲と言われています。 |
23a〜g |
レチタティーヴォと合唱 |
ヨハネ伝19-12〜17 |
福音史家,ピラト,通奏低音 4部合唱,管弦楽 |
●磔刑
イエスがゴルゴダに連行される場です。この第23曲に含まれる3つの群集合唱(b,d,f)は第21f,d曲と第18b曲の合唱に対応しています。「十字架につけよ」と歌われます。 |
24 |
合唱付きアリア |
急げや,悩めるたましいよ〜いずこへ? |
3部合唱とバス,弦,通奏低音 |
「急げ」という歌詞どおり,速い音階的なメロディでゴルゴダに急ぐ様子を表現しています。通奏低音,管弦楽でもこのメロディを模倣しています。合唱が途中で「どこへ?」と絡んできます。 |
25a〜c |
レチタティーヴォと合唱 |
ヨハネ伝19-18〜22 |
福音史家,ピラト,通奏低音 4部合唱,管弦楽 |
磔刑の場を福音史家が語ります。「ナザレのイエス,ユダヤ人の王」の部分だけアダージョになります。続く合唱は,第21b曲と対応しています。 |
26 |
コラール |
わが心の奥底ひと知らざるところに |
4部合唱,管弦楽 |
V.ヘルベルガー作のコラール"Valet will ich dir geben"の第3詩節,旋律はメルヒオール・テッシュナー作。死と永生のコラール。 |
27a〜c |
レチタティーヴォと合唱 |
ヨハネ伝19-23〜27 |
福音史家,イエス,通奏低音 4部合唱,管弦楽 |
イエスを十字架にかけた後,イエスの服を分ける場です。ここで出てくる合唱は,同音反復とシンコペーションのリズムが目立つ,独特の軽みを持った曲です。その後,イエスが母マリアと対面し,母をヨハネに委ねます。この辺はしみじみとした音楽が続きます。 |
28 |
コラール |
彼はこの最期の時に臨みて |
4部合唱,管弦楽 |
第14曲と同じコラールの第12詩節。イエスが最期の時にのぞんで,後見人を定めた,という曲です。 |
29 |
レチタティーヴォ |
ヨハネ伝19-27〜30 |
福音史家,イエス,通奏低音 |
●最期
イエスが「われ渇く」と言って,すべてが終わります。 |
30 |
アリア |
こと果たされぬ! |
アルト,ヴィオラ・ダ・ガンバ,通奏低音 |
前の曲の場面を引き継ぐアリアです。ヴィオラ・ダ・ガンバの響きが悲しみをさらに深くします。中間部では急にヴィヴァーチェとなり,イエスの復活をほのめかします。 |
31 |
レチタティーヴォ |
ヨハネ伝19-30 |
福音史家,通奏低音 |
イエスが息を引き取ったことを語ります。 |
32 |
アリアとコラール |
わが尊き救いよ,わが問うを許したまえ〜イエスよ,汝ひとたび死にたれど |
バス,4部合唱,通奏低音 |
自由詞とコラールとがあわさった曲です。通奏低音がオスティナート風に同じ音型を繰り返します。キリストの死に続くアリアにしては明るい曲になっていますが,これはバスの問いがキリストによって肯定されるからです。コラールの方は,第14曲と同じコラールの第34詩節,旋律も第14曲と同じものです。 |
33 |
レチタティーヴォ |
マタイ伝27-51〜52 |
福音史家,通奏低音 |
地震と復活の場です。伴奏の方もなかなかダイナミックです。 |
34 |
アリオーソ |
わが心よ,いまや自然界こぞりて |
テノール,フルートI・II,オーボエ・ダ・カッチャI・II,弦,通奏低音 |
次の曲に続く,レチタティーヴォのような役割の曲です。威厳のある伴奏が付いています。 |
35 |
アリア |
融けて流れよ,わが心よ,溢れくる涙の潮に |
ソプラノ,フルートI・II,オーボエ・ダ・カッチャI・II,通奏低音 |
ソプラノによる悲しいアリアです。フルートとオーボエ・ダ・カッチャが美しい伴奏を付けています。 |
36 |
レチタティーヴォ |
ヨハネ伝19-31〜34 |
福音史家,通奏低音 |
キリストを十字架から降ろす場について福音史家が語ります。 |
37 |
コラール |
おお,力を与えたまえ,キリスト,神の御子よ |
4部合唱,管弦楽 |
第15曲と同じコラールの第8詩節,旋律も第15曲と同じ。リディア旋法。 |
38 |
レチタティーヴォ |
ヨハネ伝19-38〜42 |
福音史家,通奏低音 |
●埋葬 キリストの埋葬について福音史家が語ります。 |
39 |
合唱 |
憩え,安らけく,聖なる御躯よ |
第1曲と同じ編成 |
埋葬の場面を締めくくる埋葬歌。曲の印象深さや規模からいって,事実上の終曲といえます。「マタイ」の終曲との類似性もあります。 |
40 |
コラール |
ああ主よ,汝の御使いに命じ |
4部合唱,管弦楽 |
M.シャリング作のコラール"Herzlich lieb hab' ich dich, O Herr"の第3詩節,旋律は作者不詳。 |