バッハ,J.S. Bach,J.S.

■音楽の捧げ物,BWV.1079

バッハが,ポツダム宮殿にフリードリヒ大王(2世)を訪問した際,王の与えた主題により作曲した一連の曲集です。フリードリヒ大王というのは,世界史の教科書によると,「封建時代末期に典型的な啓蒙専制君主の一人」ということで,いろいろな学問・芸術に通じていました。特に,音楽はプロ並み(?)で作曲もしています。この曲のテーマも非常に魅力的なメロディです。以前,NHK-FMに「現代の音楽」という,ちょっと不気味な雰囲気の番組があったのですが,そのテーマ曲がこの曲でした。ウェーベルンが編曲したものだったと思うのです,非常に印象的な曲でした。

演奏する楽器は指定されていませんが,トリオソナタと無限カノンについては,フルート,ヴァイオリンと通奏低音で演奏することになっています。バッハ晩年の傑作で,単一の主題を元にどこまで展開できるかを限界まで追及したような作品となっています。

●トリオ・ソナタハ短調
フリードリヒ大王が得意としていたフラウト・トラヴェルソ(横笛フルート)が独奏楽器として使われているトリオ・ソナタです。「緩−急−緩−急」という4つの楽章からなっています。これは当時支配的だった教会ソナタの形式です。

第1楽章 ラルゴ ハ短調 3/4 ヴァイオリンとフルートの間の魅力的な対話から始まる美しい音楽です。「王の主題」はほとんど顔を出さず,古典派のソナタ形式と似たパターンとなっています。

第2楽章 アレグロ ハ短調 2/4 速いテンポのフーガ楽章。フーガなのに主題が最初から通奏低音を伴って出てきます。「王の主題」は中心となっていませんが,その分,主題が効果的に登場するように使われています。

第3楽章 アンダンテ 変ホ長調 4/4 古典派ソナタの緩徐楽章同様主調の平行調となっています。甘美な響きと「ため息」のようなモチーフが絡み合う美しい楽章です。

第4楽章 アレグロ ハ短調 6/8 舞曲風の軽快さのある楽章です。冒頭の主題は「王の主題」の変形で,その後,この主題はフーガ風に展開されていきます。(2002/07/11)