バッハ,J.S. Bach,J.S.

■トッカータとフーガ ニ短調BWV565
バッハの作品の中で,いちばん有名な曲の1つです。オルガン独奏曲の中でも最も有名な曲です。出だしの「チャララー」という音型は,恐らく,ベートーヴェンの交響曲第5番の出だしの「ジャジャジャーン」と同様のインパクトを持っており,小さな子供でもすぐに覚えてしまいます。ディズニー映画の「ファンタジア」で使われたストコフスキー編曲のものをはじめとして,オーケストラ用に編曲されることも多いようです。映画では,やはりディズニー(これはアニメではない)の「海底二万マイル」の中で,潜水艦の中でこの曲を演奏するシーンがあったのを覚えています。リバイバルを子供の時に見たのですが,これは,私のクラシック音楽体験の原点だったような気がします。

名前のとおり,「トッカータ」の部分と「フーガ」の部分からなっていますが,2つの別の曲をくっつけたのではなく,2つの関連した部分からなる1曲とみなした方が良いようです。冒頭の有名な「チャララ」の音型がフーガの部分でも使われているからです。トッカータというのは,前奏曲と同じような意味で,厳密な形式が決まっていない,即興的な曲のことをいいます。この曲にも,自由に演奏されているような雰囲気があります。トッカータの後に続く,フーガの部分では,細かい音の動きが目立ち,やさしい音色も聞くことができますが,曲全体としては,非常に壮大で熱い雰囲気に満ちています。感情の起伏の激しいバッハの曲というのは珍しいのですが,これは,この曲がバッハの若い時代に書かれたことと関係があるのかもしれません。フーガの後に,再度トッカータの部分が戻ってきて,重々しく曲を閉じます。(2001/9/9)