バーバー Barber

■弦楽のためのアダージョ

アメリカの作曲家バーバーの出世作・代表作です。この曲は特にアメリカ人好みの曲です。要人の追悼のための音楽として使われることが多いし,映画「プラトーン」の中でも効果的に使われていました。もちろんアメリカ人以外にも親しまれており,20世紀に作られた曲の中でもスタンダードとしての地位を確立しています。前衛的な音楽が全盛だった時代にあって,異例なほどわかりやすい曲なのですが,ただ懐古的にロマンティックなのではなく,現代社会における人間の孤独感といった味わいを感じさせるところがやはり20世紀的といえます。

曲は,ため息混じりの甘い雰囲気で始まります。静かな雰囲気が次第に高潮していき,情感がぐっと盛り上がっていきます。そのクライマックスで音がスパっと切れる辺りが非常にドラマティックです。その後,静けさが戻り,追憶に浸るような雰囲気になって終わります。(2002/6/9)