ベートーヴェン Beethoven

■劇音楽「エグモント」op.84

ベートーヴェンが作曲した歌劇は「フィデリオ」1曲だけですが,戯曲のための音楽も作っています。ゲーテがオランダの史実に基づいて書いた戯曲が,この「エグモント」です。ゲーテを敬愛していたベートーヴェンは,非常に積極的にこの曲を書き進めました。作曲したのは,非常に有名な序曲と付随音楽9曲です。

このエグモントは,16世紀にベルギー〜フランスに生まれた実在の人物で,対スペインとの戦いで軍功を重ねた人物です。最後には処刑されてしまうのですが,その英雄を称える形で全曲は結ばれます。

序曲
全曲中,もっとも有名な曲です(というよりも,実際の演奏会で取り上げられるのは,この曲だけと言ってもよいくらいです)。戯曲全体を圧縮したような,ドラマティックな内容となっています。まず,ティンパニを除く全楽器で主音が長く伸ばされます。続いて,弦楽器が荘重な動機を演奏します。木管楽器が優しく受けます。これが繰り返された後,,ヴァイオリンや木管に新たな動機が出てきます。

続いて主部に移ります。下降する第1主題はチェロに出てきます。この主題が繰り返されているうちに大きく盛り上がります。その後,長調で第2主題が力強く出てきます。この主題は,弦楽器と木管楽器が応答するもので,序奏の動機と似た動きです。

展開部は第1主題を中心に取り扱われます。型どおりの再現部の後,エグモントの処刑を暗示するように決然とした休止が入ります。木管楽器によるブリッジの音楽の後,圧倒的な力に溢れたコーダになります。ヴァイオリンの弱音から徐々に力を増して行き,英雄を称えるかのように華やかに盛り上がります。最後の最後の部分で,ピッコロの音が彩りを添えているのもとても効果的です。(2003/05/03)