ベートーヴェン Beethoven

■ピアノ協奏曲第1番ハ長調,op.15
ベートーヴェンは5曲のピアノ協奏曲を作っています。その第1番ということなのですが,これは楽譜の出版順で,実際には第2番の方が先に作られています。曲全体のスケール感も第2番よりも大きく,両端楽章の充実した快活な響きと中間楽章の深い雰囲気が好対照を成している完成度の高い曲となっています。ベートーヴェンの交響曲については,奇数番と偶数番で対照的な雰囲気があると言われていますが,ピアノ協奏曲についても,結果として,同じようなことが言えそうです。

第1楽章
まず,ひっそりと第1主題が登場します。その後,この主題が堂々と再度呈示されます。ティンパニやトランペットが入ると軍隊風の雰囲気になります。第2主題の方は,対照的に流れるように下降していく滑らかな旋律です。再度,軍隊的な雰囲気に戻り,一区切りつくと,ソロ・ピアノが入ってきます。その導入部には新たな旋律が出てきます。その後,第1,2主題が登場します。展開部は,ちょっと暗い雰囲気になり,沈思熟考するような感じになります。再現部は,鶴の一声といった感じのピアノのソロで始まり,再度活発な雰囲気に戻ります。楽章の最後には,カデンツァが入ります。

第2楽章
詩的な美しさのある音楽です。華やかな雰囲気のある両端楽章と好対照を作っています。管楽器の中ではクラリネットの活躍が目立ちます。中間部のソロ・ピアノの動きには幻想曲を思わせるようなところがあります。この曲は,全体として古典的な構成の曲ですが,この楽章などを聞いていると,ロマン派的な雰囲気も十分に感じられます。

第3楽章
スケルツォ風のロンドです。後から急かされるような感じのある非常に快活な楽章です。ピアノとオーケストラが掛け合うような感じで進んでいきます。全体に溢れる若々しいスピード感が非常に魅力的な曲です。余談になりますが,中間に出てくる短調の主題は,ラテン音楽の「ティコ・ティコ」という曲とちょっと似ています。あまりのミスマッチに嬉しくなってきます。(2002/5/6)