ベートーヴェン Beethoven

■ピアノ協奏曲第2番変ロ長調,op.19
Piano Concerto No.2 in B flat major, op.19

ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の中では,どうみてもいちばん地味な曲です。楽器編成も小さなもので,ティンパニ,トランペット,クラリネットを含んでいません。そのため,全体の雰囲気は優美なものになっています。楽譜の出版順で第2番となっていますが,実際はこちらの方が第1番よりも先に作られています。後年の「傑作の森」から最晩年にかけての”ベートーヴェンらしさ”はまだ出ておらず,作曲者名を伏せて聞くと「誰の曲だろう」という感じさせるような曲です。

とはいえ,これはあくまでも後年のベートーヴェンの傑作群と比較しての話で,モーツァルトのピアノ協奏曲に近い,きっちりとしたウィーン古典派の空気を感じさせるようなまとまりのよい曲となっています。全曲を通じての率直さも大変気持ちの良いものです。

なお,ベートーヴェン自身,第1楽章のカデンツァを1種類残しています。このカデンツァはルドルフ大公のために書かれたもののようです。

第1楽章
シンプルなテーマが,無駄なく明快に出てくる協奏曲風ソナタ形式で書かれた楽章です。冒頭,いきなり歯切れのよい第1主題が出てきます。第2主題はオーケストラだけの呈示部ではまだ出てきません。ピアノの高音部に指慣らし風のメロディが出てきた後,独奏呈示部になります。ここで初めて第1主題に続いて優雅な気分を持つ第2主題が出てきます。

展開部は,「さすがベートーヴェン」という緊張感を漂わせます。型どおり再現部になった後,カデンツァが入り,その後,すっきりと楽章が結ばれます。

第2楽章 
瞑想的な格調を感じさせるアダージョ楽章です。自由な変奏曲形式で書かれています。主題はオーケストラだけで演奏され,独奏ピアノがそれをなぞります。終結部付近では,オーケストラとピアノがテーマの奪い合いをした後,主和音の上でピアノがソロを弾きます。ベートーヴェンのまじめさを感じさせるような楽章です。

第3楽章 
6/8拍子によるロンド楽章です。タターン,タターンとシンコペートされたロンド主題を中心に進んでいきます。この主題はカッコウの鳴き声のようにも聞こえます。モーツァルト,ハイドンは狩の気分のある楽章をいくつか書いていますが,この楽章もその流れを汲んでいます。間に出てくるエピソードは最初のものがヘ長調,2回目のものがヘ短調で出てきます。特に短調のエピソードの方は,数回繰り返され,聞く人の耳をひきつけます。最後は輝かしいコーダで結ばれます。(2004/09/06)