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ベートーヴェン Beethoven
バレエ音楽「プロメテウスの創造物」op.43
ベートーヴェンは,バレエのための音楽を2つ書いたとされていますが,そのうち本格的な管弦楽編成によるものは,この「プロメテウスの創造物」だけです。この作品の企画は,当時大成功を収めていたイタリアのバレエ作家兼ダンサー,サルヴァトーレ・ヴィガーノによるものですが,当時新進の作曲家だったベートーヴェンに音楽を依頼するあたりに彼の音楽への造詣の深さが感じられます。

曲はギリシャ神話に登場するプロメテウスを扱っています。プロメテウスは神の怒りに触れて天界を追われた後,神々の姿に似せて創造された人類に「火」を伝えたとされています。つまり,「プロメテウスの創造物」というのは,人間ということになります。バレエ音楽の物語の方は,原作が残っていないため,詳細は分からないのですが,ギリシャ神話とは違い,啓蒙的な思潮を表現したものと言われています。

ベートーヴェンは,このバレエのために序曲と16曲からなる音楽を作っています。バレエ公演は,好評だったようですが,現在はバレエとして上演されることはほとんどなく,序曲や一部の音楽が単独に演奏されることがあるぐらいです。

序曲
アダージョの序奏の後,アレグロ・モルト・コン・ブリオの主部が続きます。

序奏(ハ長調,3/4)は,大胆な響きを持った和音の連打で始まります。たっぷりと間を取った雄渾なもので,いかにもベートーヴェン的な充実感があります。その後,オーボエとホルンによる穏やかなメロディが続き,主部(2/2,変則的なソナタ形式)続きます。

第1主題は,第1ヴァイオリンによる無窮動風のもので,8分音符がせわしなく上下する生命力に溢れたものです。第2主題は木管楽器によって晴れやかに歌われます。最後に,半音階的な動きを持った新しい主題が出てきて呈示部が終わりますが,この部分は展開部の代わりのような役割を果たしています。

再現部は,ほぼ型どおりです。最後は,第1主題に基づく活気に満ちたコーダで力強く締めくくられます。

(2009/06/10)