ベルリオーズ Berlioz ■歌曲集「夏の夜」 ベルリオーズが,友人テオフィール・ゴーティエの「死の喜劇」という詩集から選んだ6篇の詩につけた歌曲集です。もとは,メゾ・ソプラノまたはテノール独唱とピアノ伴奏のために作られた曲ですがその後メゾ・ソプラノもしくはテノールまたはコントラルトと管弦楽のための版も作られています。CDなどでは,メゾ・ソプラノと管弦楽で演奏されることが多いようです。 曲は,「夏の夜」というタイトルにふさわし雰囲気がありますが,作曲当時のベルリオーズは妻のハリエットとの仲があやしくなり,別の若い女性がベルリオーズの前に現れた頃に書かれているせいか,揺れ動くようなメランコリックな雰囲気があります。 第1曲 ヴィネラル 「新しい季節が戻り,寒さが消えた時,愛しい人よ,二人で鈴蘭を森で集めよう」と歌い始めます。軽やかで繊細な雰囲気のあるシンプルな曲です。3節からなる有節歌曲です。 第2曲 ばらの精 手折られてその生命を終わったばらの精が眠った乙女に語りかける3節の歌曲です。ひそやかな感じで始まりますが,途中ほの暗い情感が大きく盛り上がります。 第3曲 入り江のほとり:哀歌 「美しいあの人は死んだ」と暗く歌い出す,恋人を失った船乗りの哀歌です。2節では長調となり,死んだ人を追憶しますが,最後はまた短調に戻ります。 第4曲 君なくて 遠くへ去った恋人に呼びかける歌です。5節まであります。2節,4節はレチタティーヴォ風です。 第5曲 墓場にて:月の光 「知っているだろうか,あの白い墓を」と歌いだされます。6節からなる,叙唱的な歌です。 第6曲 未知の島 「言っておくれ,若く美しい人よ,どこに行きたいのか」と歌いだされます。歌曲集の最後を締めるのに相応しく,明るくシンフォニックな感じのする6節の歌曲です。有節歌曲ではなく,各節は微妙に変形され,色合いを変えています。(2003/01/29) |