バーンスタイン Bernstein
■セレナード
「プラトンの『饗宴』による」「独奏ヴァイオリン,弦楽オーケストラ,ハープと打楽器のための」というサブタイトルが付いた曲です。1954年に作曲されています。ミュージカル以外のクラシカルなバーンスタインの曲の中では,最もよく演奏される曲の一つですが,何と言っても「五嶋みどりさんの伝説的な演奏」で有名になった曲です。

五嶋みどりさんは,1986年のタングルウッド音楽祭でバーンスタイン自身の指揮のボストン交響楽団とこの曲を演奏したのですが,その演奏途中,弦を2度切ったにも関わらず,最後まで演奏し通したというスリリングな出来事がありました。このエピソードは一気に世界中に広まり,みどりさんの名前も有名になりました(ちなみに初演時の独奏ヴァイオリンはアイザック・スターンでした)。

曲の印象としては,曲のサブタイトルにもあるとおり,バルトークの「弦楽器,打楽器,チェレスタのための音楽」に似た厳粛な雰囲気があります。バーンスタインといえば,「明るいアメリカ人」という印象がありますが,そういう雰囲気はほとんど感じられません。ただし,そうは言っても,最終楽章などにはジャズの雰囲気を感じさせてくれる部分もあります。

この曲は次の5つの楽章から成っています。それぞれ,プラトンの「饗宴」に出てくる人物の名前が付けられています。

  1. パイドロス(Phaedrus):レント−パウサニーアス(Pausanias):アレグロ・アルカート
  2. アリストパネース(Aristophanes):アレグレット
  3. エリュクシマコス(Erixymachus):プレスト
  4. アガトーン(Agathon):アダージオ
  5. ソークラテース(Socrates):モルト・テヌート−アルキビアデース(Alcibiades):モルト・ヴィヴァーチェ
テンポの速さの動きとしては「緩−急/中/急/緩/緩−急」ということになります。

プラトンの「饗宴」には「愛について」というサブタイトルが付いています。文字通り「プラトニック・ラブ」ということになりますが,この本では「同性愛」「少年愛」についても触れているようです(実は,読んだことはないのですが)。バーンスタイン自身の私生活のことを考えると,この曲にインスパイアされて作曲したというのは,かなり意味深なことかもしれません。(2003/09/18)