# |
曲名 |
歌・編成 |
解説 |
1 |
プロローグ
Prologue |
オーケストラのみ |
ひっそりとして,ちょっと不安な感じの音の動きで始まります。その後に指を鳴らす音が入ります。この部分では,ジェッツとシャークスの対立をセリフのないマイムで描いていますので,音楽の方もその対立を暗示するような曲となっています。この曲の最初の音の動きはこのミュージカル全体に漂う悲劇的な雰囲気の基調を作り,結末を暗示しています。その後,サクソフォーンの音が入ってくるのは,バーンスタインらしいところです。
しばらくして,リズム感が出てきて,速い動きになっていきます。ドラムスが加わるとさらにスピード感が加わります。最後は警笛の音が出てきて,次の曲に移って行きます。映画版(ジョージ・チャキリスらが高く足を上げるシーンが有名)では少し長くなっています。 |
2 |
ジェット・ソング
Jet Song |
リフ&ジェッツ |
ジェッツのテーマソングです。リーダーのリフが団員に気合を入れるように調子良く独唱した後,団員の威勢の良い合唱が続きます。 |
3 |
何かがやってくる
Something's coming |
トニー |
リフの呼びかけにも上の空のジェッツの元リーダーのトニーが「何かがやって来そう」と期待を込めて歌う曲。伴奏も「タタッタ...」という弾むようなリズムが続きます。爽やかな流れの良さを感じせてくれる曲です。 |
4 |
体育館でのダンス
The dance at the gym |
オーケストラのみ |
ジェッツとシャークスが揃って,舞踏会ならぬ体育館でのダンスパーティをする場の音楽です。シンフォニック・ダンスと呼ばれる組曲版はこの部分の音楽が中心になっています。
序奏に続いて,ブラスセクションの気持ち良い音が炸裂するブルースが始まります。ただし,ここでも不安げな半音の進行が所々に挟み込まれています。
ダンスの相手の転換のための音楽(プロムナード)の後,ホイッスルが入ると,ラテン系のリズムになり,このダンスシーンの中で最も華やかで有名なマンボになります。「マンボー!」の掛け声も入り,音楽はどんどん高潮していきます。まさにシンフォニックなマンボです。この辺でトニーとマリアの視線が合います。
音楽は急に静かになり,優雅なチャチャになります。トニーとマリアの出会いの場に相応しいロマンティックで美しい音楽が続きます。その音楽に乗って,二人は初めて言葉を交わします。
再度,プロムナードの音楽になった後,ホイッスルが入り,ジャンプという軽快な音楽に変わります。音楽とは裏腹に,マリアの兄のベルナルドは冷たい視線を2人の投げかけます。リフとベルナルドは,半時間後にドラグストアで落ち合うことを約束します。 |
5 |
マリア Maria |
トニー |
マリアのことを思い出しながらトニーが情熱的に歌います。「マリア,マリア...」という言葉が繰り返し出てきます。はじめはひっそりと次第に情熱が表面に出てきます。3大テノールをはじめとして,オペラ歌手が歌うことも多い曲です。オペラ・アリアとしてドラマティックに歌っても様になる曲です。 |
6 |
トゥナイト Balcony Scene(Tonight) |
トニー&マリア |
「ロメオとジュリエット」のバルコニー・シーンに当たる部分が「ウェストサイド物語」も用意されています。この場面で歌われるのがミュージカルの中でいちばん有名な「トゥナイト」です。数あるミュージカル・ナンバーでも最もよく知られている曲でしょう。
マリアが歌い始めた後,徐々にデュエットになって行きます。オーケストラの「タタッタ,タタッタ...」という軽快なリズムの連続と流れるようなさわやかなメロディがバランス良く絡み合い,心地よい幸福感を作っています。ただし,この曲も少し不安げに結ばれまれ,悲劇を暗示しています。 |
7 |
アメリカ
America |
アニタ,ロザリア他 |
シャークスの女性たちが「プエールトーリーコ...」と故郷を懐かしみつつ,アメリカと比較しながら歌う曲です。最初は,小さくリズムを刻んでいたのが,途中で大きく盛り上がり,その後,「タタタ,タタタ,タータータ」という強烈な複号拍子のリズムが一貫して続きます。エネルギーに溢れた大変印象的な曲です。ミュージカルの中でももっとも楽しい曲といえます。映画版ではトゥナイトの前に歌われます。 |
8 |
クール Cool |
リフ&ジェッツ |
リフがジェッツの仲間に向かい,「落ち着け」と呼びかける歌です。半音進行が続き,不安げにスイングするリズムが弱音で続く曲です。この半音進行がまさに「クール=かっこう良い」です。
途中,インストゥルメンタルだけの緊張感を帯びた部分になり,フーガになります。
後半は,ジェッツのメンバーの歌とダンスも加わり,暗い狂気を感じさせる雰囲気になっていきます。最後は,リフのソロになって終わります。映画版では後半で歌われます。 |
9 |
一つの手,一つの心 One hand, one heart |
トニー,マリア |
「トゥナイト」の続きのような曲です。花嫁衣裳店で二人だけで結婚式を真似る場面で歌われます。後の展開を考えると悲しくなる場面です。
トニーのソロの後,マリアの歌が加わり,最後に2人が声を合わせます。全体にゆったりとした叙情性が漂い,気分的には第2幕の「サムホェア」につながる曲です。 |
10 |
トゥナイト(五重唱)Tonight(Ensemble) |
リフ,ベルナルド,アニタ,トニー,マリア,シャークス,ジェッツ |
第1幕最後の盛り上がりを作るアンサンブル・ナンバー。主要人物5人がそれぞれに「今夜(トゥナイト)」にかける意気込みを同時進行で歌います。
最初は,リフとベルナルドが決闘に掛ける意気込みを暗いメロディに乗せて歌います。そこにジェッツ,シャークスの合唱が加わります。アニタが加わった後,トニーが「トゥナイト」のメロディで入ってきます。その後は,暗いメロディと「トゥナイト」のメロディが対位法的に絡みあって,立体的に進みます。
当時の(現在でも?)ミュージカルの曲で,これだけ凝った作りの曲は少ないのではないかと思います。モーツァルトのオペラの幕切れを思わせるような緊密さと機知を感じさせてくれる素晴らしい曲です。 |
11 |
乱闘 The rumble |
オーケストラのみ |
両グループが登場し,ついに決闘が始まります。トニーは最初は止めようとしますが,リフがベルナルドに刺されたのを見て,ベルナルドを刺し殺してしまいます。暗い緊迫感のある音楽の上で決闘が行われた後,警察のサイレンが入り,静かな緊迫感の中で,前半が終わります。 |