ビゼー/シチェドリン Bizet/Shchedrin

■カルメン組曲
歌劇「カルメン」の音楽は,いろいろな楽器用に”カルメン・ファンタジー”として編曲されていますが,弦楽合奏と4つの打楽器群,ティンパニ用にシチェドリンが編曲したバレエ音楽版もよく知られています。このシチェドリンの奥さんは有名なバレリーナのマイア・プリセツカヤで,このバレエ版の初演も彼女によって1967年にボリショイ劇場で行われています。

この編曲では,弦楽器はロマンティックな雰囲気をそのまま維持して,比較的普通に演奏しているのですが,それに打楽器がちょっかいを出すような感じで加わっているのが大きな特徴です。シリアスな中に時折,ユーモアを感じさせながら進んで行きます。管楽器が入らない分,音色は地味になるのですが,それを補うほどの起伏とダイナミックさに富んだアレンジがされています。旧ソヴィエト時代の作品ということで,分かりやすさの中にもキリっと締まったクールな雰囲気もあります。曲は次の13曲から成っています。
  1. 序奏(アンダンテ・アッサイ。「ハバネラ」の断片がベルに現れて曲が始まります)
  2. 踊り(アレグロ。テンポがアップし「アラゴネーズ」が華やかに始まります)
  3. 第1間奏曲(アレグロ・モデラート−アンダンテ・モデラート。死を暗示する「導入曲」)
  4. 衛兵の交代(モデラート。「アルカラの竜騎兵」の断片)
  5. カルメンの登場とハバネラ(アレグロ・モデラート−ソステヌート。原曲のカルメンの登場の場面の音楽とほぼ同様)
  6. 情景(アレグロ・モデラート。緊迫した雰囲気のある音楽)
  7. 第2間奏曲(ラルゲット。第3幕への間奏曲)
  8. ボレロ(アレグロ・ヴィヴォ。「アルルの女」のファランドール)
  9. 闘牛士(モデラート・コン・ストルテッツア。エスカミーリョの登場。「闘牛士の歌」)
  10. 闘牛士とカルメン(レント。2人の親密さを表現するような静かな曲)
  11. アダージョ(アンダンテ・モデラート−アダージョ。死を暗示する「導入曲」から「花の歌」へ)
  12. 占い(アンダンティーノ−アンダンテ・アッサイ。悲劇を暗示する占いの描写)
  13. 終曲(アレグロ−メノ・モッソ−ラルゴ。オペラの第4幕を圧縮したように「前奏曲」「導入曲」が交互に出て悲劇を描写します。最後は,冒頭同様の「ハバネラ」の断片がベルに出て静かに曲は終わります)
(2005/09/14)