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ブラームス Brahms
大学祝典序曲op.80

ブラームスといえば,まじめな雰囲気の音楽ばかりを書いていた作曲家という印象がありますが,この大学祝典序曲はその唯一の例外といっても良いほどの上機嫌な作品です。1879年にブレスラウの大学から名誉博士号が送れられることになったことに対しての「お礼」として書かれたのがこの作品です。ブラームスは,同じ頃に「悲劇的序曲」という,その名のとおりの曲も書いていますが,まさにそれと対を成す作品です。

曲はソナタ形式の曲を得意としたブラームスとしては珍しく,以前ゲッティンゲンで学生たちと交わった頃に覚えた楽しい学生歌を単純に繋げたような曲となっています。ブラームスらしい聞き応えのある響きと気楽な楽しさが同居した作品として,人気の高い作品となっています。トルコの軍楽を思わせるように,ティンパニ,大太鼓,シンバル,トライアングルといった沢山の打楽器を使っている点もブラームスの曲としては珍しい点です。

曲は次のような順に親しみやすいメロディが次々と出てきます。

冒頭,浮き立つ心を抑えているかのように弱音で行進曲調の第1主題が演奏されます。学生たちが遠くから歩いてくるような雰囲気があります。柔らかい賛美歌風のフレーズが出てきた後,第1主題が再現し,続いて力強く盛り上がります。

その後ティンパニの穏やかな連打の上に金管楽器によってゆったりと晴れ晴れとしたメロディが演奏されます。これは「われらは立派な校舎を建てた」という学生歌です。この学生歌は力を増して行き,壮大な行進曲調となります。

これが弱まった後,第2の学生歌「ランデスファーター(領主など父親のように思われている人)」が出てきます。これは抒情的で素朴なもので,第2主題に該当します。これが対位法的に進んだ後,小結尾となります。ここで出てくるのが「新入生の歌」と呼ばれる第3の学生歌です。ファゴットのスタッカートでとぼけた感じで軽快に演奏されるこのメロディは日本では,大学受験のラジオ講座のテーマ音楽として知られている曲です。ここまでが呈示部となります。

その後,第1主題を中心に扱う短い展開部となります。再現部はかなり変則的なもので,呈示部で出てきた学生歌が次々出てきて,文字通り祝典的な気分が盛り上がっていきます。クライマックスでは第4の学生歌「楽しく歌え」が高らかに演奏されます。ヴァイオリンが急速なフレーズを演奏して熱気を高めていく中,力のこもった和音の連続で壮大なエンディングを築いて全曲が閉じられます。(2007/04/01)