ブラームス Brahms

■ハンガリー舞曲集

港町ハンブルク生まれのブラームスは,この港から海外に移住するハンガリー避難民を見て,子供の頃からハンガリー音楽に親しんでいました。そういうブラームスの曲の中でももっともハンガリー的(というかジプシーの音楽そのものなのですが)な曲です。どの曲もほぼ3部形式で,奔放で情熱的なリズムと哀愁漂うメロディが特徴です。ゆるやかなラッサンと急速なフリスカの生き生きとした交錯がいちばんの聞き所です。

当時のウィーンは,ハンガリーとの二重帝国でしたので,ここでジプシー楽団の演奏を聞いたブラームスは,その演奏を聞いて自らハンガリーを訪れました。その時聞いたチャールダッシュを編曲したのがハンガリー舞曲集です。この曲集は全部で21曲あり,もとはピアノ連弾用として発表されました。その他,第10曲まではブラームス自身,ピアノ独奏用に編曲しています。

オーケストラ用の編曲は,ブラームス自身の手では,第1,3,10番のみがなされています。その他,次のように数多くの人によってオーケストラ編曲がされています。

第2,7番:ハレン/第4番:ユオン/第5番,第7番:シュメリング/第8,9番:ガル,第5,6,11〜16番:パーロウ/第17〜21番:ドヴォルザーク

ハンガリー舞曲の中では第5番,第6番,それに継いで知られているのが第1番です。このハンガリー舞曲と似たコンセプトの曲としてドヴォルザークのスラヴ舞曲集がありますが,こちらの方は,ハンガリー舞曲の大ヒットに気をよくしたジムロックという出版社が「柳の下のドジョウ」を狙って,ドヴォルザークに依頼をしたものです。

第1番
哀愁のある中音域のメロディで始まります。これを受けてきらめくような細かい音符が高音域に出てきます。シンコペーションのリズムが出てきた後,「タンタータ,ターン」と跳ね上がるようなダイナミックな感じの中間部になります。この曲にはブラームス自身によるオーケストラ版がありますが,その他,ヨアヒム編曲によるヴァイオリン独奏版も知られています。
(2004/03/13)