ブリテン Britten
■シンプル・シンフォニー,op.4
イギリスを代表する作曲家ブリテンは,意外なことに「交響曲第○番」といった曲を作っていません(春の交響曲,シンフォニア・ダ・レクイエムといった曲はありますが)。この「シンプル・シンフォニー」という曲も交響曲というよりは,新古典主義的な雰囲気を持つ,組曲のような感じの作品です。ブリテン20歳の時の作品ということですが,さらに驚くべきことは,自身9歳から12歳までの作曲スケッチをもとに曲を作っている点です。ブリテンの早熟ぶりを示す名作です。

4楽章すべてに気のきいたタイトルが付いているとおり,全曲に機知が溢れています。ブリテンの代表作であるだけでなく,20世紀前半を代表する楽しい曲と言えます。弦楽合奏だけで演奏される曲ですので,室内オーケストラによって取り上げられる機会の多い曲です。

第1楽章 騒々しいブーレ
ちょっと深刻ぶった感じで始まりますが,次第に軽妙な雰囲気になってきます。中間部では少し柔らかなメロディが出てきます。標題どおり全体に活発な動きのある楽章です。楽章の最後には,最初に出てきたメロディが弱音で出てきて,ひっそりと結ばれます。

第2楽章 おどけたピツィカート
全編ピツィカートで演奏される,ユーモアのセンスに溢れた楽章です。最初の部分は弱音でヒタヒタと感じで演奏されます。中間部ではイギリス民謡風の親しみやすいメロディが「バン,バン,バン,バン」というリズムに乗って出てきます。再度,最初の弱音の部分が戻ってきます。コーダでは中間部のメロディが力強く演奏された後,「パン」と一つ音を弾いて結ばれます。

音楽評論家の宇野功芳氏は,「この楽章をフルボリュームで鳴らして楽しむと少々のストレスは吹き飛ぶ」と書いています。心当たりの方は是非お試し下さい。

第3楽章 感傷的なサラバンド
前の楽章との対比が見事です。悲しみをたたえた主題が,弦楽器の深深とした響きで訴えてきます。中間部の問いかけるようなワルツは,ブリテン10歳の時の作品とのことです。大変聞き応えのある部分です。その後,最初の部分が,非常に力強く再現してきます。再度,音を弱めて行き,静かに楽章が結ばれます。

第4楽章 浮かれたフィナーレ
第1楽章と似た感じの楽章です。ちょっと深刻なムードで,速い音の動きを持った第1主題が出てきます。続いて,流れるような感じの穏やかな第2主題が出てきます。第1主題を中心に展開された後,再現部になります。小休止があった後,最後は第1主題がアッチェレランドし,勢いを増していった頂点で,急にスピードを落とし,充実した響きで全曲が結ばれます。(2003/07/24)