ブルッフ Bruch

■ヴァイオリン協奏曲第1番ト単調,op.26
ブルッフの代表作であるだけでなく,ロマン派を代表するヴァイオリン協奏曲です。彼のヴァイオリン協奏曲は,3曲ありますが,実質演奏されるのはこの第1番だけです。通常,「ブルッフのヴァイオリン協奏曲」と言えばこの曲を指します。曲は伝統的な3楽章構成を取っていますが,形式的にはかなり独特なもので,3つの楽章は続けて演奏されます。この点を含め,メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲と共通する雰囲気もあります。全曲に渡り絢爛豪華でメランコリックな気分に溢れているのが魅力で,大変人気の高い作品となっています。ブラームスのヴァイオリン協奏曲同様,名ヴァイオリニストのヨアヒムに相談しながら作曲されていますが,初演は別の人が担当しています。

第1楽章
ティンパニと木管の序奏に続き,独奏ヴァイオリンの自由なカデンツァが始まります。ヴァイオリンの最低音Gから高音まで一気に上っていくので,ヴァイオリンの音を味わうのに最適です。続いて力強い第1主題をヴァイオリンが演奏します。重音が多く聞き映えのする部分です。第2主題は対照的に優美で情緒深い雰囲気があります。第1,2主題を扱った力強い展開部で盛り上がった後,再現部が来るはずなのですが,ブルッフはここで,その両主題を省くという思い切った構成を取っています。序奏のカデンツァ風の部分が再現した後,経過的なフレーズが続き,静かに2楽章に入っていきます。この楽章には,「前奏曲」というタイトルが付いていますが,第2楽章への前奏曲という意識があったということは,この構成からもわかります。

第2楽章
3つの美しいメロディを組み合わせた歌に溢れた楽章です。非常に深く豊かな情感に覆われています。ずっと浸っていたくなるような穏やかな美しさと中間部での感情の高ぶりが魅力的です。

第3楽章
期待感を持たせるような序奏に続いて,独奏ヴァイオリンが格好良くダブルストップ(重音)で精力的で勇壮なメロディを奏でて始まります。何となくブラームスのヴァイオリン協奏曲を思い出させるところがありますが,作曲年代からすると,これはブラームスの方が真似たとも考えられます。前の楽章の静かな憧れと好対照を成しています。オーケストラで繰り返された後,華麗なアルペジオと優美な装飾が続きます。第2主題は,伸びやかで幅広く歌われます。展開部,再現部と続いた後,プレストのコーダになり,情熱的に全曲は結ばれます。(2002/03/25)