カントルーブ Canteloube

■オーヴェルニュの歌

カントルーブがフランス西部のオーヴェルニュ地方の民謡のメロディを収集し,それを素材として作曲(正確にいうと編曲なのかもしれませんが)したソプラノ独唱とオーケストラのための歌曲集です。カントルーブ自身,この地方の出身ですので,自分自身の体に染み付いた音楽と言えそうです。

もともとは伴奏無しで歌われる民謡に,カントルーブは,色彩感豊かなオーケストレーションを施しています。民謡は,素朴なままの方が素晴らしいという考えもありますが,この曲集に関しては,編曲の力によって世界各地に知られるようになったことは事実です。日本の作品の比較でいうと外山雄三の「管弦楽のためのラプソディ」と似たところがあるかもしれません。

この曲集は,全5巻27曲からなっていますが,1曲を除いて,すべてオック語という古い南欧語で歌詞は書かれています。フランス人が聞くと,相当強い訛のある言葉に聞えるのではないかと思います。大部分の日本人にとっては,その違いはよく分からないのではないかと思いますが,「芸術的な素朴さ」は音楽全体から伝わって来ます。

この曲集の中で最も有名な曲は第1集第2曲の「バイレロ」です。この曲は,高地オーヴェルニュの羊飼いの歌で,序奏部分を聞くだけで田園風景が広がるようです。(2002/11/23)