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シャブリエ Chabrier
田園組曲 Suite Pastorale 

シャブリエは,フランスの内務省に勤務しながら作曲を行っていた「アマチュア」だったのですが,1880年,音楽活動に専念するために,ついに役人生活に終止符を打ちました。39歳の時です(「四十にして惑わず」といったところでしょうか。その最初に出版されたのが,「絵画風の小品集」という以下の10曲からなるピアノ小曲集です。

初演は,1881年4月9日にパリの国民音楽協会のコンサートで部分的に行われたのですが,その7年後の1888年,10曲中の4曲を管弦楽用に編曲しました。これが現在,「田園組曲」として知られている作品です。こちらの方は,1888年11月4日に,フランスのアンジェ氏で初演されています。

フランスの組曲といえば,クープランやラモーなどによるクラブサン(チェンバロ)による組曲の伝統がありますが,この「田園組曲」やオリジナルの「絵画風の小品集」は,そのスタイルに通じる性格を持っています。視覚的なイマジネーションを想起させるような詩情を持ったこの組曲は,日本ではそれほど演奏されませんが,フランス音楽の一つの典型と言っても良い,美しく洗練された作品集です。

第1曲 牧歌 Idylle(ピアノ版第6曲)
トライアングルの音に続いて,弦楽器のピチカートの上にフルート,オーボエなどの木管楽器が流麗なメロディを歌います。シンプルでありながら,楽器の多彩な絡み合いが楽しめる曲です。

第2曲 村の踊り Danse villageoise
(ピアノ版第7曲)
クラリネットが粗野な感じのするメロディをくっきりと歌って始まります。それを弦楽器が受けます。その後も弦楽器と管楽器が掛け合いをするように進んで行きます。次第に華やかさを増した後,穏やかさを取り戻して,のどかな雰囲気を持った中間部になります。その後,冒頭のメロディをクラリネットが演奏し,第1部が再現されます。ここではより一層,華やかな盛り上がりを見せ,堂々と締めくくられます。

第3曲 木陰で Sous bois(ピアノ版第4曲)
「静かに揺れ動く木の葉のざわめき,緑の間から漏れ差し込んでくる光の戯れ,聞き取れはしない大地と平和の微音」とピアニストのコルトーはこの曲について語っています。そのとおりの音楽です。揺れ動く伴奏音型の上で,木管楽器を中心とした精妙で変化に富んだ音が絡み合います。

第4曲 スケルツォ・ヴァルス Scherzo-valse(ピアノ版第10曲)
タイトルどおり,少しとぼけた感じの3拍子系のリズムが一貫し,歯切れの良いダイナミックな音楽が続きます。ここでもクラリネットを中心とした木管楽器と弦楽器との掛け合いが楽しめます。中間部は,少し神妙な気分になり,対照的な音楽となります。最後は,またおどけた雰囲気に戻り,明るい雰囲気で全曲が締められます。
(2009/02/25)