OEKfan TOP > 曲目解説集  Program Notes
ショーソン Chausson
詩曲op.25 Poem 
1896年,ベルギーの名ヴァイオリニスト兼作曲家,ウジェーヌ・イザイのために作曲された,香り高い詩情に満ちたヴァイオリン独奏曲の傑作。ヴァイオリン・パートについては,この楽器を知り尽くしたイザイ自身の意見を十分取り入れて作られた曲だけあって,ヴァイオリニストの中で弾かない人がいないぐらいの人気作品となっています。ヴュータン,ヴィニャフスキ,フランク,ルクー,イザイ...と続く「フランコ=ベルギー楽派」直系の曲で,ルクーのソナタに刺激を受けて作られたと言われています。

曲はオーケストラによる陰鬱な序奏で始まります。その後,独奏ヴァイオリンが低い変ロの音を長く伸ばして第1主題を演奏し始めます。無伴奏でカデンツァ風に演奏する印象的な部分が続いた後,優しく瞑想するような気分となります。その後,情熱的な第2主題が出てきて,熱く歌い上げます。これらの2つの主題が交互に出てきて,曲全体としては,緩やかな部分と情熱的な部分とが混然一体となった夢想的でロマン溢れる気分を作り上げます。

この曲は,ヴァイオリン協奏曲ほど長くはありませんが,中間部の盛り上がりは聞き応え十分で,ヴァイオリンが熱く歌いまくります。ヴァイオリンという楽器の名技性と抒情性の両立を要求される点がこの曲の難しさでもあり魅力的でもあります。最後は,タイトルどおり詩的な余韻を残して静かに終わります。

原曲は,ヴァイオリンとオーケストラのための曲ですが,ショーソン自身によるピアノ伴奏版でもよく演奏されます。オーケストラ版の方が当然色彩感が豊かですが,ピアノ伴奏版の方がヴァイオリンの音色そのものを集中して味わうことができると言われています。

曲のタイトルは,最初は「愛の勝利の歌:ヴァイオリンとオーケストラのための交響詩」と次に「ヴァイオリンとオーケストラの詩」と名付けられていましたが,最終的には,単純に「詩(Poem)」となりました。「詩」だとあまりにも短すぎるのか,日本では「詩曲」または「ポエム」と呼ばれるのが慣例となっています。(2008/08/18)