ショパン Chopin

■ピアノ・ソナタ第3番ロ短調op.58

ショパンといえば,ワルツ,スケルツォ,マズルカ...といった比較的規模の小さいピアノ曲が多いのですが,そういう中にあって,もっともスケールの豊かさの感じられるのがこの曲です。第2番のソナタよりも全曲のバランスの良さと統一感があり,ショパンのピアノ曲の総決算,円熟の極みにあるような傑作となっています。

この曲を作った頃,ショパンは父の死の知らせを聞いて,落ち込んだ気分になっていました。その後,ジョルジュ・サンド邸に移ることで回復に向ったのですが,そういう,悲しみから新たな世界へと向う力を随所に感じさせてくれる曲となっています。

第1楽章
歯切れ良く下降していくような鮮烈な出だしで曲は始まります。この下降主題は数回繰り返された後,非常に清々しい気分を持ったノクターンのような第2主題が出てきます。呈示部の最後はセンチメンタルな気分に溢れた,非常に美しい箇所です。

展開部ではいろいろな主題が出てきて,即興的に流れて行った後,再現部になります。ただし,展開部と再現部の区別ははっきりとしておらず,第1主題の後の推移部から再現され,第2主題が続いて明確に出てきます。最後に短いけれどもどこか翳りを持ったコーダがついています。

第2楽章
スケルツォ。落ち着くところのない,饒舌さを持った主題で始まります。この主題は第1楽章の第1主題と関連するものです。トリオは和音を中心とした,落ち着いたもので,スケルツォ主題と好対照を作っています。

第3楽章
前楽章から続くようにして始まります。最初に荘重な序奏が出てきた後,静かに語り掛けるようなカンタービレの主題が出てきます。ラルゴというテンポの指示どおり次第に夢うつつの陶酔した幸福な雰囲気になります。中間部ではめまぐるしい転調がされます。

第4楽章
重厚さを持った短い序奏に続いて,風雲急を告げるような情熱的な楽想を持ったロンド主題が出てきます。前の楽章の穏やかで幸福な冗長さをぎゅっと引き締めるようなムードがあります。6/8拍子の推進力のあるリズムに乗って出てくるロンド主題は再現されるたびに,段々と音量を増して,華麗になっていきます。もう一つの下降するようなパッセージとが交互に出てきながら,大きな盛り上がりを作って,全曲が締めくくられます。(2004/04/04)