ドビュッシー Debussy

■ピアノのために

3つの楽章からなるドビュッシー初期のピアノ曲集です。1896年に第2楽章にあたるサラバンドを作曲した後,1901年にその他の楽章を作り,「ピアノのために」としてまとめています。この3曲セットというのは,その後のドビュッシーのピアノ曲でしばしば見られることになります。

「前奏曲−サラバンド−トッカータ」という曲名からは古典的な組曲を思わせる雰囲気がありますが,「ピアノのために」という,大胆なタイトルからも分かるとおり,ドビュッシーがピアノ音楽に真剣に取り組もうと決意を持って作曲した作品となっています。どの楽章も演奏技術的にも難しく,文字通り”ピアニスティック”な作品となっています。

第1曲 前奏曲(十分にいきいきと,リズミックに)
3部形式の華麗な作品。単一主題によるソナタ形式と見ることもできます。「タン,タタタタタタ」という力強い冒頭の主題に続いて軽やかな動きが続きます。この主題はその後も独特な和声を伴って執拗に繰り返されます。コーダにはカデンツァが入り,テンポがぐっと遅くなります。楽章はそのまま荘重な雰囲気で閉じられます。

第2曲 サラバンド(優雅な落ち着きとゆるやかさをもって)
サラバンドというのは第2拍にアクセントのある緩やかな楽想を持つ舞曲です。主題自体は18世紀のクラブサン曲のような優雅さを持つ穏やかなものですが,ドビュッシー独特の和声で豊かに包み込まれており,色彩感にも富んでいます。後にラヴェルがこの曲をオーケストラ用に編曲しているのも注目されます。

第3曲 トッカータ(活発に)
練習曲風の急速な楽章。細かく流麗な音の流れの中に色彩的な雰囲気を持っています。時折,東洋的な雰囲気も感じさせてくれます。最後の曲らしく,大きな盛り上がりを作って華麗に全曲が結ばれます。(2004/06/06)