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ドヴォルザーク Dvorak
交響曲第4番ニ短調op.13,B.41
ドヴォルザークが,作曲家としての頭角を表すきっかけとなった作品です。この曲は,交響曲第3番の作曲された翌年1874年に完成したもので,ドヴォルザークは,この2曲の交響曲などをオーストリア政府文科省に提出し,ハンスリックやブラームスなどから高い評価を得て,奨学金を受けるようになりました。

このことを意識してか,ボヘミア色はそれほど強調せず,ドイツ・オーストリアの伝統的な交響曲風の作品となっています。対位法的書法を使った堅固な形式の中に内面性や苦悩や情熱がしっかりと盛り込まれています。短調にも関わらず,暗く沈む感じよりは,情熱やエネルギーをたぎらせている感じがあるのも特徴です。

初演は,まず,3楽章のみが1874年スメタナの指揮でプラハで行われました。全曲の初演は,1892年にドヴォルザーク自身の指揮で行われています。

編成:フルート2(ピッコロ持ち替え),オーボエ2,クラリネット2,ファゴット2,ホルン4,トランペット2,トロンボーン3,ティンパニ,トライアングル,ハープ,弦五部

第1楽章 アレグロ ニ短調 3/4 ソナタ形式
弱音でさざめくような弦楽器の動機の上に木管楽器による第1主題が演奏されて曲が始まります。第1主題の「ターー,タター,タター」というリズムは,第3楽章後半でも回想されることになります。第2主題の方は,落ち着きのあるチェコ風のもので,しなやかに歌われます。この第2主題が繰り返され,クライマックスを築きます。展開部は,第1主題のリズム・パターンが優雅な第2主題と絡み合うように展開していきます。再現部の後のコーダも大変立派です。

第2楽章 アンダンテ・ソステヌート・エ・モルト・カンタービレ 変ロ長調 4/4 変奏曲形式
ワーグナーの歌劇「タンホイザー」の中の「巡礼の主題」を思わせる宗教的な気分のある主題による変奏曲です。5つの変奏を通じて神秘的な格調の高い気分が持続します。各変奏の区分は鮮明ではありませんが,チェロのしっとりとした歌をはじめ,渋く濃厚なした気分のある楽章です。当時,ドヴォルザークはワーグナーの音楽を強く受けていたことを示す楽章と言えます。途中,リズムに動きが出てきて,一瞬,盛り上がりを見せますが,再度静けさを取り戻し,ロマンティックな気分の中で静かに楽章が閉じられます。

第3楽章 スケツツォ アレグロ・フェニーチェ ニ短調 6/4
フェニーチェという指示は,「荒々しく,粗野に」といった意味があり,楽章の最初から,打楽器などが活躍する華やかで躍動感のある楽章となっています。その後,短調ながら軽快なメロディが続きます。この主題は,後にピアノ二重奏用の「ボヘミアの森より」の第6曲でも使われています。中間部のトリオ(ハ長調,2/4)は,ボヘミアの農民の行列を思わせるような,民族音楽的な雰囲気になります。第1部が再現された後,最後の部分で第1楽章の冒頭部の主題が出てきてコーダになります。

第4楽章 フィナーレ アレグロ・コン・ブリオ ニ短調 2/4 ロンド形式
ロンド形式で書かれた終曲ですが,2つの主題を対比させているので,ソナタ形式に近い雰囲気があります。主要主題は,スタッカートで歯切れ良く登場します。その後,木管楽器による対照的なメロディが続きます。副主題は,もう少しテンポが遅く,滑らかに演奏されます。これらが交替するように登場しますが,その間に第3楽章のトリオに出てきたトリルを持つ動機が印象的に使われます。最後は,長調になり,金管楽器や打楽器を加えた華やかな雰囲気で全曲をキリっと締めくくります。

(参考文献)
作曲家別名曲解説ライブラリー6.ドヴォルザーク.音楽之友社,1993
(2009/02/07)