エルガー Elgar

■エルガー:行進曲「威風堂々」第1番ニ長調,op.39-1
エルガーの作曲した曲の中でいちばん有名な曲です。ほとんど英国の第2の国歌のように親しまれています。この曲のタイトルとなっている「威風堂々」は,シェークスピアの「オテロ」第3幕第3場に出てくるオセロのセリフ「Pomp and circumstance of glorious war(輝かしい戦いの盛儀盛宴)」から取られています。戦前のレコードのタイトルで「威風堂々たる陣容」と付けられたものが,「威風堂々」と縮められたようです。簡潔な4文字熟語的にまとめられた名訳です。

この「威風堂々」は,第5番まであるのですが,実際に演奏されるのはほとんど第1番だけです。この曲は,一種の愛国的な軍隊行進曲で,1901年という20世紀幕開けの年に作曲・初演されています。エドワード7世がこの行進曲を聴いて「君はいずれ世界中くまなくひろまる節を作曲したね」と賞賛したという逸話も有名です。大英帝国の最後の栄光を感じさせるような風格のある行進曲で,どこか残照のイメージが漂います。

曲は3部形式で出来ています。堂々と,がっちりとした感じの行進曲で始まった後,中間部で雄大なメロディが出てきます。エドワード7世が褒めたのはこのメロディで,エルガーに歌詞を付けることを勧めました。エルガーはそれに応え,合唱曲「戴冠式頌歌」の終曲「希望と栄光の国」でこのメロディを使っています。イギリスのプロムスのラストナイトなどでは,「Land and hope and glory...」とお客さんが自然発生的にこの部分を歌うことになっています。その後,再度最初の行進曲が戻り,さらに盛大に盛り上がって全曲が終わります。(2003/8/17)