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フォーレ Faure
付随音楽「マスクとベルガマスク」op.112 Masques et Bergamasques, op.112

イタリアの伝統的な喜劇,コメディア・デラルテとヴェルレーヌ作の「艶なる宴」とを組み合わせた1幕の音楽喜劇のための音楽です。台本は詩人のフォーショワによるもので,モナコ大公の依頼によって書かれました。初演は1919年4月10日モンテカルロで行われました。舞台音楽としてはフォーレの最後の作品となりましたが,作曲期間が2ヶ月しかなかったこともあり,パストラル以外の曲は,すべて旧作を転用したものとなっています。曲は次の8曲から成っています。

第1曲 序曲
第2曲 パストラル
第3曲 マドリガル,op.35
第4曲 いちばん楽しい道,op.87-1
第5曲 メヌエット
第6曲 月の光,op.46-2
第7曲 ガボット
第8曲 パヴァーヌ,op.50

この中では,第4曲,第6曲には独唱が入り,第3曲には合唱が加わります。第6曲の「月の光」はヴェルレーヌの詞によるものですが,この中の言葉から「マスクとベルガマスク」というタイトルが付けられています。この8曲の中では,最後のパヴァーヌが特に有名です。なお,この曲集は,第1,5,7,2曲の順に並べられた組曲版も知られています。

第1曲 序曲 Overture
爽やかな空気がすっと流れていくようなモーツァルトの曲を思わせる音楽。フォーレの後期の作品としては,意外なほどシンプルなこの曲は,フォーレが20歳頃に書いた管弦楽のための間奏曲をもとに作られたものです。

第2曲 パストラル Pastorale
第1曲とは対照的にフォーレの晩年のスタイルによる作品です。爽やかな雰囲気自体は,序曲と似ていますが,より陰影に富んだ音楽となっています。組曲版では最後に演奏されることになっている点からも,付随音楽のために新たに書かれた曲の中では,最も充実した曲と言えます。この曲を作った後,フォーレは管弦楽作品を書いていません。

第3曲 マドリガル,op.35 Madrigal,op.35
原曲はピアノ伴奏による合唱または四重唱で,詞はA.シルヴェストルによるものです。コラール「深き苦しみの淵から」を主題とする,古風な旋法を思わせる優雅な曲です。

第4曲 いちばん楽しい道,op.87-1 "Le plus doux chemin"madrigal,op.87-1
1904年作曲の「2つの歌」の中の1曲。A.シルヴェストルの詞による,哀調を帯びたマドリガルです。原曲はピアノ伴奏です。

第5曲 メヌエット Menuet
シンプルに書かれたメヌエットです。初期の作品の転用と考えられています。

第6曲 月の光,op.46-2 Clair de lune, menuet, op.46-2
1887年作曲の「2つの歌」の中の1曲。詞はヴェルレーヌによるもの。ヴェルレーヌの詩の持つ官能性と古風で雅やかなメヌエットとが融合した作品で,フォーレの歌曲の中でも最もよく知られています。原曲はピアノ伴奏です。

第7曲 ガボット Gavotte
前の曲のノスタルジックな気分を吹き飛ばすような力強いリズムを持ったガボットです。

第8曲 パヴァーヌ,op.50 Pavane,op.50
1887年作曲のピアノまたはオーケストラ伴奏による合唱曲。ここでもそうですが,合唱なしで演奏されることもあります。古いルネサンス舞曲風の重い足取りですすむ優雅な作品で,フォーレの代表作,レクイエムの中の一つの楽章に加えても良いような雰囲気を持っています。神秘的なフルート独奏で始まる絶妙の味わいを持った繊細なオーケストレーションは,ラヴェルやドビュッシーの同種の曲に影響を与えたといわれています。
(2007/01/08)