フォーレ Faure

■劇付随音楽「ペレアスとメリザンド」op.80

メーテルリンク作の「ペレアスとメリザンド」には,いろいろな作曲家が音楽をつけていますが,その中でもいちばんよく知られているのが,フォーレ作曲のものでしょう。ドビュッシーのオペラも有名ですが,演奏時間的にも,フォーレの曲の方が聞かれる機会は多いと思います。

このフォーレ版の「ペレアス」ですが,こちらも劇の付随音楽として1898年に書かれています。ドビュッシーの「ペレアス」は,1893〜1902年に書けて作曲されていますので,ちょうど同じ時期に作曲していたことになります。

物語は,王子ゴローが森の中で出会った神秘的な女性メリザンドと結婚するところから始まります。その後,ゴローの義弟ペレアスとメリザンドが愛し合うようになります。このことを知ったゴローは,2人の密会の場で弟を殺してしまいます。メリザンドはゴローを許しながらも,力尽きてペレアスのあとを追うようにして死んでいきます。

この付随音楽は,現代では次の4曲からなる組曲版で演奏されることがほとんどです(その他,「メリザンドの歌」というソプラノ独唱入りの曲が挿入されることもあります)。どの曲もシンプルで精妙な構成で書かれており,無駄のない響きを味わうことができます。

第1曲「前奏曲」
第1幕のあく前に演奏される曲です。メリザンドの主題とよばれる静かで柔らな主題が出てきた後,しだいに情熱的になります。第2主題は悲劇を暗示しています。主要主題が再現したあと,ホルンの信号によってゴローが暗示されます。

第2曲「糸を紡ぐ女」
第3幕の前に演奏される間奏曲。終始弦楽器が鳴らす3連符は紡ぎ車をあらわしています。オーボエがその上に主題を演奏します。中間部は短調になります。

第3曲「シシリエンヌ」
第2幕への前奏曲。メリザンドが泉のそばでペレアスとふざけていてゴローからもらった指輪を泉に落としてしまうシーンの前に、間奏曲として便われます。この組曲のみならず,フォーレの全作品の中でももっとも良く知られた曲です。単独で演奏されることもよくある大変人気の高い曲です。

シチリア舞曲といえば,揺れるような6/8拍子です。ハープの演奏するシチリア風のリズムに乗って,哀愁のこもったフルートのメロディがすっきりと出てきます。このメロディは非常に美しいものです。一度聞いただけで,心を捉える魅力を持っています。曲は小ロンド形式で書かれており,いくつか副主題が出てきます。そのいずれもが繊細な美しさを持っています。

この曲はもともとはチェロの独奏曲として作曲されたものですが,フルートのオリジナル曲のような錯覚をしてしまうほど,フルート版はよく知られています。

第4曲「メリザンドの死」
第5幕への前奏曲。喪に服しているような二重付点音符を含む重い足取りで始まります。これが次第に盛り上がりフォルテになります。静かで哀れなメロディが最後に出て来て,静かに曲は閉じられます。(2004/05/22)