ガーシュイン Gershwin

■ラプソディ・イン・ブルー

「パリのアメリカ人」と並ぶガーシュインのオーケストラ作品の代表作です。聞き所満載で,サービス精神に溢れた名曲です。この曲は1924年に作られているのですが,その成功によってガーシュインは,流行作曲家としてだけではなくクラシック音楽の作曲家としても認められるようになりました。アメリカで行われるオリンピックなどのイベントの開会式などにもよく登場することからもわかるように,アメリカ音楽を代表する1曲といえます。

この曲は,現在はクラシック音楽として分類されていますが,曲にはかなりジャズっぽい雰囲気があります。ただし,ジャズといっても戦前に流行した編成の大きなバンドのイメージです。タイトルに「ブルー」という言葉が入っているとおり,哀愁のある半音階が特徴的な「ブルース」のムードも漂わせています。いずれにしてクラシックとジャズを幻想曲風のピアノ協奏曲のような形の中にうまく盛り込んだ傑作となっています。この曲は,通常,グローフェ(「グランド・キャニオン」組曲の作曲者)がオーケストレーションを行ったもので演奏されますが,近年ではオリジナルのジャズ・バンドによる伴奏のもので演奏される機会も出てきているようです。

曲は,音を滑らすように音階を駆け上っていく特徴的なクラリネット・ソロで始まります。このクラリネットのグリッサンドというのは,通常のクラシック音楽にはほとんど出てこない技法です。この部分を聞くだけで,ちょっとレトロな戦前のジャズの気分に浸ることができます。続いて,ピアノのカデンツァが出てきますが,この辺もやはりレトロな酒場の雰囲気によく合いそうです。その後,シンフォニックな展開が続きます。全曲に渡って「タ・ターン・タ」というシンコペーションのリズムが頻繁に出てくるのが,ジャズ的なところです。曲はシンフォニックで華やかな雰囲気の部分と,ピアノの即興風の部分とが自由に出てくる,文字通り「ラプソディック」な作りになっています。中間部は,静かで甘い雰囲気になりますが,この辺はテレビのCMの音楽などでもよく使われています。終結部は,再度テンポ・アップし,ピアノの技巧を誇示するような感じの部分が続きます。最後は,最初に出てきた主題が豪快に再現し,ミュージカルやショーのエンディングのような感じで結ばれます。ザッツ・エンターテインメントという感じです。(2002/6/9)