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グノー Gounod
歌劇「ファウスト」バレエ音楽 Faust Ballet Music

歌劇「ファウスト」は,その名のとおり,ドイツの文豪ゲーテの「ファウスト」をオペラにしたもので,グノーの代表作となっています。この歌劇は,1859年にパリで初演されているのですが,その後,グノーは第5幕の最初の部分にバレエ音楽を書き加え,グランド・オペラとして再演されています。

もともと,このグノーの「ファウスト」は,ゲーテの原作とかなりかけ離れているので,ドイツでは「マルガレーテ」と呼ばれているくらいですが,このバレエ音楽は大変よく出来ており,ゲーテの原作に出てくる「ワルプルギスの夜」の情景を巧く描いています。

親しみやすいメロディを持った曲が次々と出てきますので,バレエ音楽としてだけでなく,演奏会用の作品としてもよく演奏されます。恐らく,グノーの管弦楽作品としては,もっとも多くのレコーディングが残されてる曲でしょう。全体は7つの部分からなっていますが,切れ目なく続けて演奏されます。

編成:フルート2(ピッコロ持ち替え),オーボエ2,クラリネット2,ファゴット2,ホルン4,トランペット2,トロンボーン3,テューバ,ティンパニ,大太鼓,シンバル,トライアングル,タンブリン,ハープ,弦五部

1.ヌビア人の踊り Dance of the Nubians アレグレット
金管楽器を中心とした堂々とした和音に続いて,ヴァイオリンが滑らかに艶やかなワルツを演奏し始めます。クレオパトラに仕えるエジプトの奴隷の踊りです

2.クレオパトラと金の杯 Cleopatra and golden cup アダージョ
金管楽器とハープによる前奏の後,低弦に落ち着きと伸びやかさを兼ね備えたようなメロディが出てきます。途中,軽やかな動きになりますが,再度,最初の部分に戻って終わります。

3.ヌビアの奴隷の踊り Danse antique アレグレット
ちょっと不吉な雰囲気を持った序奏に続き,タンブリンやピッコロなどの軽快な動きが特徴的なエキゾティックな音楽が始まります。ヴェルディの歌劇「アイーダ」のバレエ音楽と通じるようなムードを持った曲です。

4.クレオパトラと奴隷たちの踊り Dance of Cleopatra and her slaves モデラート・マエストーソ
金管楽器が刻むたっぷりとした和音の上に,ヴァイオリンが跳躍するようなメロディを生き生きと演奏します。

5.トロイの娘たちの踊り Dance of the Trojan maiden モデラート・コン・モート
このバレエ音楽の中では最も有名なメロディがこの踊りです。ハープのアルペジオの上に弦楽器がうっとりとするようなメロディを滑らかに歌うワルツです。トロイの女王ヘレンを中心とする群舞(コール・ド・バレエ)の音楽です。ちなみにこの曲は,かなり以前,NHK−FMのクラシック音楽番組のテーマ曲として使われていたことがあります。

6.鏡の踊り Mirror dance アレグレット
楽しげな序奏に続いて,ポルカのようなリズムを持った軽快な音楽が始まります。中間部は木管楽器を中心に演奏されます。この曲もまた,以前,NHK−FMのクラシック音楽番組のテーマ曲として使われていたことがあります。

7.フリネの踊り Dance of Phryne アレグロ・ヴィヴォ
全曲の締めくくりの音楽ということで,もっとも華やかで荒々しい気分をもった曲となっています。叩きつけるようなリズムが続き,原色的な華やかさを持っています。中間部は,ハープを伴奏とした優雅な音楽になりますが,それほど長くは続かず,また最初の叩きつけるような音楽が戻ってきます。コーダはさらにテンポが速くなり,熱狂的な気分の中で曲は閉じられます。(2007/06/18)