OEKfan TOP > 曲目解説集  Program Notes
グノー Gounod
交響曲第2番変ホ長調

グノーは,3曲の交響曲を作曲しています。そのうちの1曲は番号なしの小交響曲,第1番はハイドンを意識したような曲であるのに対し,1856年に書かれた第2番は,ベートーヴェンまたはメンデルスゾーン的な様式を持った作品となっています。すみずみまで入念かつ手際よく作曲された曲で,グノーの熟達した手腕を味わうことができる「隠れた逸品」と言っても良い洗練された作品です。

伝統的な交響曲の作曲技法に則りながら,それにグノーらしい親しみやすさを付け加えているのが特徴です。大変明快で分かりやすい交響曲で,重く厚い響きをなるべく避けながら、美しい響きで包み込んでいる点がフランス音楽らしいところです。同種の作品として,ビゼーの交響曲第1番は,大変よく聞かれていますが,グノーの交響曲も,それと同時にもっと聞かれても良いのではないかと思います。

第1楽章 アダージョ ― アレグロ・モルト
曲はアダージョの重々しい序奏で始まります。威厳のある金管楽器の響きやしっかりと絡み合ってくるヴァイオリンの音型などは,べートーヴェンの交響曲第7番や後期のハイドンの交響曲の序奏などを連想させます。

主部のアレグロ・モルトは2つの主題から成っています。序奏部のちょっと厳めしい響きから解放されて,はっきりとした輪郭を持った第1主題が出てきます。このメロディは,後の展開で使われることを計算したもので,調性も拍子も同じこともあり,ベートーヴェンの「英雄」交響曲の第1楽章を連想させるような颯爽とした雰囲気があります。第2主題は,対照的に優美な曲線を描きながら下降してくるような穏やかなものです。

展開部は交響曲第1番とは比較にならないほど入念なもので,主として第1主題を扱い,時には対位法的な展開も見せながら進んでいきます。途中,序奏部の重々しい足取りも出てきます。展開部が大きな盛り上がりを見せ,クライマックスを築いた後,再現部に入っていきます。この再現の仕方もベートーヴェンの交響曲を思わせるところがあります。曲は,この勢いを維持していきますが,楽章の最後の部分ではベートーヴェンのようにしつこくはなく,ハイドンの交響曲を思わせるようなさらりとしたユーモアを感じさせながら,すっきりと締められます。

第2楽章 ラルゲット 変ロ長調 3部形式
静かで落ち着いた柔かな気分のある楽章です。最初に出てくるメロディは,ロマンティックで宗教的な祈りの雰囲気もあります。品が良く,厳粛さもあるけれども,それが勝りすぎていないのがフランスの交響曲らしいところです。

中間部では,明るく小躍りするようなとても印象的なメロディが出てきます。交響曲の一つの楽章から離れて,バレエ「ジゼル」などに出てきそうな気分になります。その後,再度,第1部が帰ってきますが,ここでは多少転調しており,中間部の主題を対位法的に絡ませています。最後,熱い盛り上がりを見せた後,ロマンティック・バレエの1シーンが終わるように静かに楽章は締められます。

第3楽章 スケルツォ:アレグロ・モルト ト短調
暗く内に秘めた緊張感をたたえたスケルツォです。ただし,ギャロップするような主題は軽快でメンデルスゾーンの曲のような爽快さも持っています。トリオは,落ち着いた雰囲気になり,木管楽器と弦楽器が対話をするように進み,ト長調からニ長調へと転調されます。再度,最初の部分が再現されて楽章は終わります。

第4楽章 フィナーレ:アレグロ,レッジェーロ・アッサイ ソナタ形式
明快に構成されたソナタ形式による古典派の音楽のような楽章です。機知に富んだユーモアと透明感に満ち,喜ばしい感情を持ったメロディが自由に湧き出て,追いかけあいをしているように進んでいきます。暗く哲学的な性格の多いドイツの交響曲のフィナーレとは全く異なった,平易な親しみやすを持ったフランス風の楽章です。楽章の最後では,一瞬立ち止まった後,さらに楽しげなムードになり,明るく軽やかに締めくくられます。
(2009/02/21)