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ヘンデル Handel
オラトリオ「メサイア」 HWV.56 Messiah

ヘンデルの最も有名な作品で,「第9」,「くるみ割り人形」と並んで年末に頻繁に演奏される曲です。初演は,1741年にダブリンで行われていますが,彼の死後もモーツァルトをはじめとして,いろいろな編曲が行われ,多くの版の楽譜が出版されています。それぞれ,楽器編成もかなり違うようですが,極め付けは,トーマス・ビーチャムがレコーディングしているグーセンス版という大編成のものでしょう。

歌詞は,ヘンデルの友人のジェネンズが聖書の有名な詩句を抜き出したものです。ヘンデルは,後年,英国に帰化していますから歌詞は当然英語です。キリストの生涯を忠実に追ったものではないので,歌詞を聞けばキリストの伝記物語がわかるわけではありませんが,全曲は「預言と降誕」「受難と贖罪」「復活と永遠の生命」という流れになっており,それぞれが第1部,第2部,第3部にあたります。

合唱及び4人の独唱者によって歌われます。アルトのパートについては,男声アルト(カウンターテノール)によって歌われる曲もあります。また,楽譜の版によっては,違う声域によって歌われる曲もあるようです。

この曲は,ヘンデルがすべての俗事を忘れ,自分で書きながら感動するほど没頭して作曲したと言われています。 そのようなヘンデルの宗教的感動がストレートに伝わる名曲です。メサイアは,オラトリオなので,宗教曲ということになりますが,バッハの曲のように教会音楽で演奏されることを想定していません。このことがかえって,メサイアが世界中で愛好されている理由になっているといえそうです。

なお,「メサイア」というのは,ヘブライ語の「メシア」の英語読みです。メシアというのは,「油をそそがれたる者」つまり「神から選ばれた支配者,悩める者の解放者」を意味しています。ということで,「救世主」という邦訳で呼ばれることもよくあります。

第1部 預言とキリストの誕生
種類 曲名 解説
1 序曲 シンフォニア メサイア全体の序曲。伝統的なフランス序曲形式で書かれています。2部分からなっています。第1部は荘重な付点リズムを持つ重々しい曲,第2部は速いフーガです。
2 T アコンパニャート Comfort ye my people
わが民を慰めよ
序曲が半終止すると「慰めよ(Comfort)」というやわらかな言葉で歌詞が始まります。曲もゆったりとしてきれいなメロディーです。「救世主が生まれる」という預言のためにまず「(戦争にあった)エルサレム(「ジェルザレム」と発音)の国そのものが赦され、その民たちが慰められるのだ」という内容です。
3 T アリア Every valley shall be exalted
もろもろの谷は高くせられ
曲調ががらりと変わります。最初の歌詞は,「エブリバディー」と聞こえますが,「エブリバリー(全ての谷)」です。「全ての谷は身を起こし、全ての山は低くなれ」という地形改変(?)の歌です。この曲では,「高く」「低く」という言葉が音の動きによって描かれているのが特徴です。
4 Ch 合唱 And the Glory of the Lord
こうして主の栄光が現れ
前曲を受けて「主の栄光が現れ,人は皆ともにこれを見るのだ」と栄光をたたえます。
5 B アコンパニャート Thus saith the Lord of Hosts
万軍の主はこう言われる
●預言
バスによる力強い歌。「ゆり動かしてやるぞ(Sha〜〜ke)」と装飾的に歌います。こういう細かい音の動きが連続する歌い方をメリスマといいます。
6 A アリア But who may abide the day of His coming
その来る日には誰が耐え得よう
元は男声アルトのためにかかれた曲です。
7 Ch 合唱 And He shall purify the sons of Levi
レビの子孫を清め
レビの子孫を清める話が歌われます。息の長い主題がフーガ風に模倣されます。
8 A レチタティーヴォ Behold,a Virgin shall concieve
見よ,おとめがみごもって
●受胎の知らせ
「見よ, 乙女が身ごもって..」というセリフに合った,美しくゆったりとした語りです。
9 A+Ch アリアと合唱 O thou that tellest good tidings
よきおとずれをシオンに伝える者よ
でマリアの受胎の知らせがエルサレムにもたらされる喜びをアルトが美しいメロディに乗って歌います。この曲は、そのまま合唱へと引き継がれ,人々の間を吉報が伝わっていきます。
10 B アコンパニャート For behold,darkness shall cover the earth
見よ暗きは地をおおい
●闇の中の光
一転してバスの沈んだレチタティーボから,暗いアリアに入っていきます。主の栄光が現われるまえの「闇が地上を覆い」「闇の中を歩む民・死の陰の地に住む者」たちの状態を歌ってます。この暗い暗いアリアが、その次の大いなる光へとつながっていきます(このアリアの中でも、「大いなる光(The great light!)」の部分だけは、明るく力強い調子になっています。)
11 B アリア The people that walked in darkness
暗やみの中に歩んでいた民は
12 Ch 合唱 For unto us a Child is born
ひとりのみどりごがわれわれのために生まれた
●聖誕
クリスマス物語の中核,キリストの誕生を喜ぶ歓喜の合唱です。「ワンダフル」という言葉が聞こえます。明快なリズムと巧妙な対位法技術を駆使しています。前の暗いアリアから一転して明るい合唱になります。曲中,「権威が彼の肩に載る(And the government shall be upon His shoulder)」というフレーズがありますが,ここのフレーズだけは「タターン,タターン」という足を引きずるような上昇音階になっています。これは,「受難のリズム」を意味し,ゴルゴダの丘に十字架を背負って登っていくことを暗示しています。キリストの受難は、生まれながらにして決まっていたことになります。
13 ピファ 田園交響曲 キリストが生まれたところで,一休みします。メサイア全曲の中で声楽が入らないのは,序曲を除くとこの曲だけです。「田園曲」ということで,非常に美しくゆったりとしたシチリア風のリズムをもったのどかな曲となっています。次の「羊飼いたちが野宿をしながら...」につながっていきます。
14 S レチタティーヴォ There were shepherds abiding in the filed
羊飼いたちが夜
●降誕の知らせ
降誕を天使が羊飼いたちに知らせに来る,クリスマス物語中最もポピュラーなシーンです。短い語りかけるようなレチタティーボが4曲続きます。「羊飼いたちが野宿をしていた」「天使が近づき、主の栄光が周りを照らした」「天使は言った『恐れるな、私はおおいなる喜びを告げる。今宵ダビデの町で、主イエスキリストが生まれた』」と,次第に盛り上がっていきます。
アコンパニャート And lo,the angel of the Lord
主の御使が現れ
15 S レチタティーヴォ And the angel said unto them
御使は言った
16 S アコンパニャート And suddenly there was with the angel
するとたちまち,おびただしい天の軍勢が
4曲目に「すると突然、天の大軍が現われ、神を賛美して言った!」という,フレーズが歌われ,次の「いと高きところに神の栄光(Glory to God in the higest),地には平和(and peace on earth)」 という合唱につながります。クリスマス物語のクライマックスを合唱が歌い上げます。神を賛美するフレーズと,「地に平和を」を歌う男声の高低の対比が聞き所です。後奏では,天使が遠くに飛び去って行く様が描かれています。この一連の流れは第1部の聴き所といえます。
17 Ch 合唱 Glory to God in the highest
いと高きところでは神に栄光があるように
18 S アリア Rejoice greatly,O daughter of Zion
シオンの娘よ,大いに喜べ
●主の栄光
主の降誕の知らせは,シオンの人々に伝わっていきます。この喜びもヴァイオリンの通奏低音に伴奏されたソプラノの独唱によって歌われます。Rejoiceという言葉が装飾的にひきのばされるのが印象的です。
19 A レチタティーヴォ Then shall the eyes of the blind
その時,目しいの目は開かれ
レチタティーボにより「盲いた目が開き,聞こえない耳が開く」という奇跡が語られます。続いて,メサイアでは珍しい二重唱(ハモるのではなく順番に歌うだけですが)に入っていきます。「すべて重荷を負って苦労している者は,彼のものに行きなさい」というような歌詞を歌っているだけに,心が休まるような美しい曲です。アルトに後に,同じメロディがソプラノの高い音域で歌が出てくると,ゾクっとします。
20 A+S アリア He shall feed His flock like a shepherd
主は牧者のようにその群れを養い
21 Ch 合唱 His yoke is easy
彼のくびきは負いやすく,彼の荷は軽いからである
第1部最後の曲は、前の歌詞をうけ「主のくびきは負いやすく、主の荷は軽い」という希望のある合唱曲です。軽く弾むようなメリスマは,軽さを表現しています。長い主題がはじめは模倣風に歌われ,最後で突然確信にみちた和声進行を見せます。

第2部 受難と贖罪
種類 曲名 解説
22 Ch 合唱 Behold the Lamb of the God
見よ,世の罪を取り除く神の小羊
●人々の裏切り
メサイアはキリストの一生を順を描いて書き上げているわけではないので、2部に入るといきなり受難がはじまります。第2部は暗い合唱ではじまります。
23 A アリア He was despised
彼は侮られて人に捨てられ
メサイアの中でもいちばん長い曲で10分以上かかります。ヘンデルが泣きながら作曲したといわれる感動的なアリアです。小羊であるキリストは,本当は世の罪を取り除く子羊なのですが,人々に見捨てられ,多くの痛みを背負っている,といった内容を切々と歌います。ここから後,「犠牲となる神の小羊(Lamb)=キリスト」と「迷える羊(sheep)=地上の人間」 が何度も出てきます。これを混同しないようにして下さい。中間部では,「タッカ,タッカ」という感じのオスティナートの伴奏音形が悲痛な感じを高めます。
24 Ch 合唱 Surely He hath borne our griefs
まことに彼はわれわれの病を負い
前曲中間部のオスティナートの音型が登場した後,合唱が始まります。曲の最初は「勝利!勝利!」と聞こえますが「Surely(確かに)」と歌っています。お間違えのないように。「メサイア中もっとも激しい曲」と位置付けられている曲で,「彼が担ったのは私達の病であり,彼が負ったのは私達の痛みであったのに...」という強烈な悲嘆を表現しています。
25 Ch 合唱 And with His stripes are we healed
その打たれた傷によって,われわれはいやされたのだ
「彼の受けた傷によって,我々は癒された」という人々の後悔をうたう曲です。モーツァルトのレクイエムの中に出て来そうな感じの曲です。この曲の出だしは有名な「十字架の音形」になっています。出だしの「and with His stripes」は横に比較的平らな「and with」2音の後,高音から一気に貫くように落ちる「His stripes」2音で十字架を形作っています。「stripes(傷)」というのは,鞭打ちのあとの縞の傷のことです。
26 Ch 合唱 All we like sheep have gone astray
われわれはみな羊のように迷って
3連続の合唱の最後の曲は「私達は皆,羊のように惑い」と歌います。
「We like sheep」という歌詞が何度も出てきますが。「羊が好き」ではなく,「羊のような私たち」ということです。曲調は,一転して明るく,羊のように惑う人々の馬鹿ばかしさを表現しています。あまりの明るさに楽しげに思えるほどですが,最後はアダージョになる「その我々の罪を主は彼に負わせた(and the Lord hath laid on Him the iniquity of us all)」と重々しく結びます。ここはバスの合唱の聴かせどころです。
27 T アコンパニャート All they that see Him,laugh Him to scorn
すべて彼を見る者は,彼をあざ笑い
●さらに彼をあざける人々
引き続き,人々は彼をあざけりつづけます。「彼を見る人は皆、彼を嘲笑し、唇を突き出しつつ言う(All thay that see Him...Saying!)」とテノールがレチタティーボで激しく語るとすぐ,「彼は神が彼を救ってくれると信じていた。神が彼に心をかけているのなら神が彼を救い出せばいいのだ(He trusted in God ...)」と人々のセリフを合唱が続けます。「デリバリー」と聞こえますが,「配達せよ」と言っているわけではなく,「deliver him」と歌っています。人々は「彼」を嘲笑しつづけます。この曲では,「彼を(Him)」という語が沢山出てきます。
28 Ch 合唱 He trusted in God that He would deliver Him
彼は神に身をゆだねた
29 T アコンパニャート Thy rebuke hath broken His heart
そしりが彼の心を砕いたので
●絶望と処刑
ここで,キリストは十字架にかけられます。しかし,歌詞には「十字架」や「処刑」という言葉は出てきません。せいぜい十字架の音形で暗示されるだけです。が,しかし,「あざけりに彼の心は打ちひしがれ,彼を慰める者はだれもいなかった」,「目をとどめ,しかして見よ。これほどの哀しみがあったであろうか」,「彼は,彼の民の背きのゆえ命ある者の地から断たれたのだ」とキリストが処刑されて命を落としたことが歌われます。

ここの3曲は,非常に大きな悲しみを静かな美しいメロディーでテノールとまたはソプラノが歌います。
30 T アリオーソ Behold,and see if there be any sorrow
彼にくだされた苦しみのような
31 S アコンパニャート He was cut off out of the land
彼は生けるものの地から断たれた
32 S アリア But Thou didst not leave His soul in hell
あなたは彼を陰府に捨ておかれず
●復活
「しかしあなたは彼の魂を陰府(よみ)に渡すことがなかった」と神がそのひとり子を見捨てなかったことをアリアで歌います。ここから曲調が少し変わります。
33 Ch 合唱 Lift up your heads,O ye gates
門よ,こうべをあげよ
冥府に落ちたキリストの魂が復活するための城門を開ける有名な合唱が力強く歌われます。男声と女声の交唱風のかけあいによって「栄光に輝く王とは誰ぞ?」「そは強く雄々しい主、万軍の王なり」と歌われます。いままでの暗さを一気に吹き飛ばす明るさと力強さのある合唱曲です。なお,メサイア全曲中この曲だけが、女声3部合唱(男声も入れると5声部)に分かれています。二重対位法を駆使した非常にヘンデルらしい合唱曲です。
34 T レチタティーヴォ Unto which of the angels said He
いったい,神は御使たちのだれに対して
短いレチタティーヴォです。
35 Ch 合唱 Let all the angels of God worship Him
神の御使たちはことごとく,彼を拝すべきである
歯切れのよいリズムでホモフォニックに始まりますが,すぐに2つの動機が二重対位法で展開されます。
36 A アリア Thou art gone up on high
あなたはとりこを率い,高い山に登られた
歌とヴァイオリンの装飾的な旋律の絡み合いが美しい曲です。版によってはこの曲を欠いているものもあります。
37 Ch 合唱 The Lord gave the word
主は命令を下される
ここでも交唱風のかけあいが見られます。ユニゾンで歌う男声を四声の合唱が受けます。
38 S アリア How beautiful are the feet of them
ああ,麗しいかな,良きおとずれを告げる者の足は
●平和の福音
キリストが復活し,その「平和の福音を知らせる者の足のなんと美しいことか」と牧歌的で少し哀愁を帯びた美しいメロディーがソプラノの独唱で歌われます。静かな澄んだ美しいメロディーを楽しむことができます。
39 Ch 合唱 Their sound is gone out into all lands
その声は全地に響き渡り

40 B アリア Why do the nations so furiously rage
なにゆえ,もろもろの国びとは騒ぎたち
●国王たちの反乱
キリストの復活のニュースはエルサレムから各国へと伝わっていきますが,各国の王たちは,そんな新興宗教の台頭を良しとせず,キリストの復活や神の栄光を伝えるキリストの弟子たちを迫害しようとしました。そうした地上の王たちの反抗がバスのアリアで謳われます。これは,バスのアリアの中では名曲中の名曲で,ヘンデルの最もすぐれた独唱曲の1つです。特に途中の「against the Lord(主にさからい...)」からの部分の謳いあげはバスがもっとも映える部分です。細かい急速な音形を伴奏にして,歌の旋律がはげしい起伏を描きながら進行します。「地のもろもろの王は」以下が後半です。
41 Ch 合唱 Let us break their bonds asunder
われらは彼のかせをこわし
地上の王たちが「我らは枷(かせ)を打ち壊して...(Let us break...)」と勝手なことをあっちこっちで言い合う状態を歌う難曲です。この曲は「スタッカート・コーラス」として知られています。地上の王たちの勝手な言い分が4声のあちこちからバラバラにきこえてきます。3拍子の曲ですが,2拍目から入ったり,速いメリスマがあったりするので各パートが揃うところはほとんどありません。それでいながら全体で一つのきれいな合唱曲にまとまっているところがヘンデルの素晴らしさです。
42 T レチタティーヴォ He that dwelleth in heaven
天に座するものは笑い
●天上ではそれを笑う
地上の王たちの様子を見てあざ笑う短いレチタティーヴォです。
43 T アリア Thou shalt break them with a rod of iron
おまえは鉄のつえをもって彼らを打ち破り
続くアリアでは「汝鉄の槌をもて、彼らをくだかん(thou shalt break them with a rod of iron)」となり,地上の王たちの反乱も主の力の前にはひとたまりもなくうちくだかれてしまいます。
44 Ch 合唱 Hallelujah
ハレルヤ
●ハレルヤ!
メサイアを一度も聞いたことがない人でも,一度は耳にしたことがある曲でしょう。歌詞は,鉄槌によって主の栄光が再び地上を照らした後の主の栄光の国の訪れを賛美して歌う内容です。「ハレルヤ!」とは喜びの声で,「全能なる我らの神である主が王となった!」「王の中の王!主の中の主」と賛美しています。

「全能の神(for the Load God Omnipotent reignerth」の部分では突然四声部がユニゾンになります。ロンドン初演(1743年)で,感激した国王ジョージ2世が思わず立ちあがったのがこの部分です。以後,この曲を聴く時は聴衆は立ち上がって聴く習慣になりました。ハレルヤの動機とユニゾンの動機が交互にあらわれ,両者が同時に結び付きます。最後はハレルヤ動機が繰り返され,最高の盛り上がりを見せたところで、第2部は終わります。

第3部 復活と永遠の生命
種類 曲名 解説
45 S アリア I know that my Redeemer livethわたしは知る,わたしをあがなう者は生きておられる ●復活への信仰
第3部の最初の曲は,田園的な雰囲気ではじまります。キリスト教信仰の根幹をなす「復活」への信仰が美しいソプラノのアリアで歌いあげられます。ソプラノのソロの最後の聴かせどころです。
46 Ch 合唱 Since by man came death
死がひとりの人によってきたのだから
「死が一人の人によってもたらされたのだから、死者の復活もまた一人の人によってもたらされるのだ」という信仰を合唱が歌います。「すなわち、アダムによってすべての人が死ぬことになったように、キリストによってすべての人が永遠の生命を受けることになる」というものです。死を歌う静かな部分と,生命を歌う力強い部分の対比が見事です。冒頭の部分は四重唱または半数の人数で歌われます。後半はアレグロに変わり,全合唱,全合奏の伴奏で歌われます。合唱のタイミングをあわせるのが難しい曲です。
47 B レチタティーヴォ Behold,I tell you a mystery
ここで,あなたがたに奥義を告げよう
●永遠の生命
バスが,やさしく語りかけます。「見よ。我は汝らに神秘を告げよう...(Be hold, I tell you a mystery...)」。 このバスは今までの荒々しく力強いバスとは一転して、慈父のようなやさしさに溢れています。「最後のラッパの鳴らんとき、たちまち、瞬く間にすべて我らは変容さるべし...(but we shall be changed. In a moment, int he twinkling of an eye at the last trumpet)」という歌詞があるので,伴奏ではラッパの音が模されています。
48 B アリア The trumpet shall sound
ラッパが響いて
そして,最後の審判のトランペットが高らかに吹き鳴らされます。「最後のラッパが鳴るとき、死者は朽ちざるものへと甦り...(...the trumpet shall sound, and the dead shall be raised incorruptible...)」 。そのトランペットに合わせてバスが,高らかに永遠の生命への甦りを謳いあげます。
49 A レチタティーヴォ Then shall be brought to pass
その時聖書に書いてある言葉が
短いレチタティーヴォです。
50 A+T デュエット O death,where is thy sting?
死よ,おまえのとげはどこにあるのか
2人の独唱者が二重唱をするのはこの曲だけです。
51 Ch 合唱 But thanks be to God
しかし感謝すべきことには
前曲から休み無く続きます。力強くホモフォニックに始まり,最後はアダージョとなって強調されます。
52 A アリア If God be for us,who can be against us?
もし神がわたしたちの味方であるなら
神への確信に満ちたアリアです。
53 Ch 合唱 Worthy is the Lamb―Amen
ほふられた小羊こそは―アーメン
●アーメン
メサイア全曲の最後は、「屠られた子羊こそは」で始まる有名なアーメンコーラスです。「屠られてその血によって我々を神に購ってくださった子羊こそ、力、富、知恵、威力、誉れ、栄光、賛美を受けるにふさわしい方である」と神の小羊,キリストを賛美して歌います。「力、富...(to receive power, and reches...)」の部分は非常にカッコイイ合唱です。乗りにのった最高の上昇音階を聞くことができます。メサイアではハレルヤとアーメンという最高の盛り上がりの2曲のテキストが黙示録から取られています。

途中でラルゲットにテンポが変わり,その後の「Blessing...」からは,男性合唱のユニゾンで歌い出されます。曲の最後,バスの「アーメン」から始まる詠唱は(バス→テノール→アルト→ソプラノ),力強い合唱となっていきます。リズムと和声の明快さ,対照的な主題の結合法などヘンデルの合唱フーガの典型で,大曲を閉じるにふさわしい雄大な規模を持っています。最後に突如アダージョとなり,四声部が同時にアーメンを唱えてメサイア全曲の幕を閉じます。

*このページの作成にあたっては,「くまさんのヘンデル『メサイア』のページ」(http://members.jcom.home.ne.jp/kumanomi/messiah/)及び音楽之友社の名曲解説全集を参考にいたしました。今後,少しずつ改訂していきたいと思っています。(2001/12/10)

*その後,上記の「くまさん」からご連絡を頂き,相互リンクさせて頂くことになりました。(2002/4/20)