# |
声 |
種類 |
曲名 |
解説 |
22 |
Ch |
合唱 |
Behold the Lamb of the God
見よ,世の罪を取り除く神の小羊 |
●人々の裏切り
メサイアはキリストの一生を順を描いて書き上げているわけではないので、2部に入るといきなり受難がはじまります。第2部は暗い合唱ではじまります。 |
23 |
A |
アリア |
He was despised
彼は侮られて人に捨てられ |
メサイアの中でもいちばん長い曲で10分以上かかります。ヘンデルが泣きながら作曲したといわれる感動的なアリアです。小羊であるキリストは,本当は世の罪を取り除く子羊なのですが,人々に見捨てられ,多くの痛みを背負っている,といった内容を切々と歌います。ここから後,「犠牲となる神の小羊(Lamb)=キリスト」と「迷える羊(sheep)=地上の人間」
が何度も出てきます。これを混同しないようにして下さい。中間部では,「タッカ,タッカ」という感じのオスティナートの伴奏音形が悲痛な感じを高めます。 |
24 |
Ch |
合唱 |
Surely He hath borne our griefs
まことに彼はわれわれの病を負い |
前曲中間部のオスティナートの音型が登場した後,合唱が始まります。曲の最初は「勝利!勝利!」と聞こえますが「Surely(確かに)」と歌っています。お間違えのないように。「メサイア中もっとも激しい曲」と位置付けられている曲で,「彼が担ったのは私達の病であり,彼が負ったのは私達の痛みであったのに...」という強烈な悲嘆を表現しています。 |
25 |
Ch |
合唱 |
And with His stripes are we healed
その打たれた傷によって,われわれはいやされたのだ |
「彼の受けた傷によって,我々は癒された」という人々の後悔をうたう曲です。モーツァルトのレクイエムの中に出て来そうな感じの曲です。この曲の出だしは有名な「十字架の音形」になっています。出だしの「and
with His stripes」は横に比較的平らな「and with」2音の後,高音から一気に貫くように落ちる「His
stripes」2音で十字架を形作っています。「stripes(傷)」というのは,鞭打ちのあとの縞の傷のことです。 |
26 |
Ch |
合唱 |
All we like sheep have gone astray
われわれはみな羊のように迷って |
3連続の合唱の最後の曲は「私達は皆,羊のように惑い」と歌います。
「We like sheep」という歌詞が何度も出てきますが。「羊が好き」ではなく,「羊のような私たち」ということです。曲調は,一転して明るく,羊のように惑う人々の馬鹿ばかしさを表現しています。あまりの明るさに楽しげに思えるほどですが,最後はアダージョになる「その我々の罪を主は彼に負わせた(and
the Lord hath laid on Him the iniquity of us all)」と重々しく結びます。ここはバスの合唱の聴かせどころです。 |
27 |
T |
アコンパニャート |
All they that see Him,laugh Him to scorn
すべて彼を見る者は,彼をあざ笑い |
●さらに彼をあざける人々
引き続き,人々は彼をあざけりつづけます。「彼を見る人は皆、彼を嘲笑し、唇を突き出しつつ言う(All
thay that see Him...Saying!)」とテノールがレチタティーボで激しく語るとすぐ,「彼は神が彼を救ってくれると信じていた。神が彼に心をかけているのなら神が彼を救い出せばいいのだ(He
trusted in God ...)」と人々のセリフを合唱が続けます。「デリバリー」と聞こえますが,「配達せよ」と言っているわけではなく,「deliver
him」と歌っています。人々は「彼」を嘲笑しつづけます。この曲では,「彼を(Him)」という語が沢山出てきます。 |
28 |
Ch |
合唱 |
He trusted in God that He would deliver Him
彼は神に身をゆだねた |
29 |
T |
アコンパニャート |
Thy rebuke hath broken His heart
そしりが彼の心を砕いたので |
●絶望と処刑
ここで,キリストは十字架にかけられます。しかし,歌詞には「十字架」や「処刑」という言葉は出てきません。せいぜい十字架の音形で暗示されるだけです。が,しかし,「あざけりに彼の心は打ちひしがれ,彼を慰める者はだれもいなかった」,「目をとどめ,しかして見よ。これほどの哀しみがあったであろうか」,「彼は,彼の民の背きのゆえ命ある者の地から断たれたのだ」とキリストが処刑されて命を落としたことが歌われます。
ここの3曲は,非常に大きな悲しみを静かな美しいメロディーでテノールとまたはソプラノが歌います。 |
30 |
T |
アリオーソ |
Behold,and see if there be any sorrow
彼にくだされた苦しみのような |
31 |
S |
アコンパニャート |
He was cut off out of the land
彼は生けるものの地から断たれた |
32 |
S |
アリア |
But Thou didst not leave His soul in hell
あなたは彼を陰府に捨ておかれず |
●復活
「しかしあなたは彼の魂を陰府(よみ)に渡すことがなかった」と神がそのひとり子を見捨てなかったことをアリアで歌います。ここから曲調が少し変わります。 |
33 |
Ch |
合唱 |
Lift up your heads,O ye gates
門よ,こうべをあげよ |
冥府に落ちたキリストの魂が復活するための城門を開ける有名な合唱が力強く歌われます。男声と女声の交唱風のかけあいによって「栄光に輝く王とは誰ぞ?」「そは強く雄々しい主、万軍の王なり」と歌われます。いままでの暗さを一気に吹き飛ばす明るさと力強さのある合唱曲です。なお,メサイア全曲中この曲だけが、女声3部合唱(男声も入れると5声部)に分かれています。二重対位法を駆使した非常にヘンデルらしい合唱曲です。 |
34 |
T |
レチタティーヴォ |
Unto which of the angels said He
いったい,神は御使たちのだれに対して |
短いレチタティーヴォです。 |
35 |
Ch |
合唱 |
Let all the angels of God worship Him
神の御使たちはことごとく,彼を拝すべきである |
歯切れのよいリズムでホモフォニックに始まりますが,すぐに2つの動機が二重対位法で展開されます。 |
36 |
A |
アリア |
Thou art gone up on high
あなたはとりこを率い,高い山に登られた |
歌とヴァイオリンの装飾的な旋律の絡み合いが美しい曲です。版によってはこの曲を欠いているものもあります。 |
37 |
Ch |
合唱 |
The Lord gave the word
主は命令を下される |
ここでも交唱風のかけあいが見られます。ユニゾンで歌う男声を四声の合唱が受けます。 |
38 |
S |
アリア |
How beautiful are the feet of them
ああ,麗しいかな,良きおとずれを告げる者の足は |
●平和の福音
キリストが復活し,その「平和の福音を知らせる者の足のなんと美しいことか」と牧歌的で少し哀愁を帯びた美しいメロディーがソプラノの独唱で歌われます。静かな澄んだ美しいメロディーを楽しむことができます。 |
39 |
Ch |
合唱 |
Their sound is gone out into all lands
その声は全地に響き渡り |
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40 |
B |
アリア |
Why do the nations so furiously rage
なにゆえ,もろもろの国びとは騒ぎたち |
●国王たちの反乱
キリストの復活のニュースはエルサレムから各国へと伝わっていきますが,各国の王たちは,そんな新興宗教の台頭を良しとせず,キリストの復活や神の栄光を伝えるキリストの弟子たちを迫害しようとしました。そうした地上の王たちの反抗がバスのアリアで謳われます。これは,バスのアリアの中では名曲中の名曲で,ヘンデルの最もすぐれた独唱曲の1つです。特に途中の「against
the Lord(主にさからい...)」からの部分の謳いあげはバスがもっとも映える部分です。細かい急速な音形を伴奏にして,歌の旋律がはげしい起伏を描きながら進行します。「地のもろもろの王は」以下が後半です。 |
41 |
Ch |
合唱 |
Let us break their bonds asunder
われらは彼のかせをこわし |
地上の王たちが「我らは枷(かせ)を打ち壊して...(Let us break...)」と勝手なことをあっちこっちで言い合う状態を歌う難曲です。この曲は「スタッカート・コーラス」として知られています。地上の王たちの勝手な言い分が4声のあちこちからバラバラにきこえてきます。3拍子の曲ですが,2拍目から入ったり,速いメリスマがあったりするので各パートが揃うところはほとんどありません。それでいながら全体で一つのきれいな合唱曲にまとまっているところがヘンデルの素晴らしさです。 |
42 |
T |
レチタティーヴォ |
He that dwelleth in heaven
天に座するものは笑い |
●天上ではそれを笑う
地上の王たちの様子を見てあざ笑う短いレチタティーヴォです。
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43 |
T |
アリア |
Thou shalt break them with a rod of iron
おまえは鉄のつえをもって彼らを打ち破り |
続くアリアでは「汝鉄の槌をもて、彼らをくだかん(thou shalt break them with
a rod of iron)」となり,地上の王たちの反乱も主の力の前にはひとたまりもなくうちくだかれてしまいます。 |
44 |
Ch |
合唱 |
Hallelujah
ハレルヤ |
●ハレルヤ!
メサイアを一度も聞いたことがない人でも,一度は耳にしたことがある曲でしょう。歌詞は,鉄槌によって主の栄光が再び地上を照らした後の主の栄光の国の訪れを賛美して歌う内容です。「ハレルヤ!」とは喜びの声で,「全能なる我らの神である主が王となった!」「王の中の王!主の中の主」と賛美しています。
「全能の神(for the Load God Omnipotent reignerth」の部分では突然四声部がユニゾンになります。ロンドン初演(1743年)で,感激した国王ジョージ2世が思わず立ちあがったのがこの部分です。以後,この曲を聴く時は聴衆は立ち上がって聴く習慣になりました。ハレルヤの動機とユニゾンの動機が交互にあらわれ,両者が同時に結び付きます。最後はハレルヤ動機が繰り返され,最高の盛り上がりを見せたところで、第2部は終わります。 |