服部隆之 Hattori,Takayuki

■ドラマ「王様のレストラン」の音楽

1995年にフジ・テレビ系で放送されたドラマ「王様のレストラン」は,松本幸四郎演ずる”伝説のギャルソン”が落ちぶれたフレンチ・レストランを立て直すコメディでした。脚本を担当した三谷幸喜はまだそれほど注目を集めておらず(「古畑任三郎」が放送される前のことです),視聴率的にもそれほど高くはなかったようですが,物語の大部分がレストランの中で展開される演劇的で密度の高い群像ドラマとして高い評価を得ました。文字通り”伝説的”な作品と言えます。

上述の松本幸四郎の他,西村雅彦,梶原善といった三谷さんの劇団に属していた役者,山口智子,筒井道隆といったテレビでおなじみの役者が出演しており,とても楽しいアンサンブルを見せてくれました。

音楽を担当したのは服部隆之さんです。フレンチ・レストランの雰囲気にぴったりの上品で華やかなオーケストレーションがドラマを大きく盛り上げていました。ドラマ終了後10年たった今でもCM音楽などで使われる曲もありますので,スタンダードとして定着しつつある音楽と言えます。

ちなみに番組のエンディング・テーマとして歌われた「Precious junk」という曲は,今ではすっかり大物となった平井堅の作詞・作曲・歌による作品で,彼のデビュー曲でした。

●序曲
番組が始まる前に流れていた曲です。ミュージカルか何かが始まるような期待感を持たせる弦楽器の細かい音の動きに続いてバーンと花火が広がるような華やかなメロディが出てきます。その後,フルートによるちょっと憂いを持ったメロディをはさみながら,フル・オーケストラの明るい響きが次々と出てきます。たびたび出てくる転調も新鮮な味を持っています。それがうるさ過ぎず,上品で洗練された雰囲気でまとめられているのが素晴らしい点です。最後はコミカルな味を漂わせながら結ばれます。

この曲は,2004年サントリー・モルツのCMの音楽にも使われていました(缶ビールが清流を流れていく映像が印象的でした)。

●勇気
ドラマの中で困難な状況に立ち向かい,レストランのメンバーが一致団結するような場面でよくなっていた曲です。この辺の”大げささ”が妙にぴったりと来るドラマでした。

弦楽器とティンパニによるリズムの刻みの上にホルンが「勇気」をイメージさせるテーマを朗々と演奏します。しばらくすると弦楽器を中心とした流れるようなメロディが出てきます,これがさらに高揚し,トランペットなどを加えて大きく盛り上がります。その後,最初のホルンのメロディが再現します。その後も前半と同じ展開で盛り上がりますが,オーケストレーションは少し変えられており,最後はさらに大きく盛り上がるコーダとなって終わります。(2005/02/10)