服部隆之 Hattori,Takayuki

■NHK大河ドラマ「新選組!」の音楽

2004年のNHK大河ドラマ「新選組!」は,脚本を三谷幸喜が担当し,香取慎吾を中心とした若手俳優による若々しい群像劇として仕上げられていたことで人気を集めました。その音楽を担当したのが,服部隆之さんでした。

服部さんは,他の三谷作品のための音楽も書いていますが,NHK大河ドラマの音楽を書いたのは初めてのことです。爽やかさと躍動感を持った雰囲気の曲が多く,ドラマのイメージにぴったりでした。

●メインテーマ
「新選組!」のメインテーマは,従来の大河ドラマと一味違う曲となっていました。これまでにも歌の入ったテーマ曲はありましたが,オペラ歌手の朗々とした声の入る曲はこの曲が初めてでしょう。

曲は「タンタタン,タタタ」というリズムを伴った序奏で始まります。このリズムはこの曲の基本リズムとして曲の推進力となります。

最初に出てくるテーマは,ホルンによる勇壮なメロディです。このメロディは明るいのか暗いのかはっきりしないところがあります。最初は明るく感じるのですがよく聞くと影を持っています。キラキラとしたオーケストレーションは,若い新選組のメンバーの大志を感じさせてくれます。しばらくすると対照的に柔らかく優しいメロディに変わります。この部分も隊士たちの夢を感じさせてくれます。

その後,この曲のいちばんメインとなる悲壮感のある力強いメロディが出てきます。次第に力を帯びてクライマックスを築いた後,曲は最初の部分に戻り,同じ順で繰り返されます。

繰り返し後は歌が加わります。まずホルンが演奏していたメロディを男声合唱が「ラララ,ララララ...」と歌います。優しいメロディの部分になると合唱団は歌うのをやめ,テノール独唱のみになります。

その後,「いとしき友はいずこに...」という歌詞が初めて出てきます。悲壮感のあるメロディに乗って,テノールがヒロイックに歌い上げます。最後に重々しいコーダが付いて,堂々と結ばれます。

この曲は2分30秒ほどの中に「新選組!」の1年分のドラマの展開をコンパクトに詰め込んでいます。若々しい明るさの中に悲壮感をたたえて進んだ後,最後に堂々とした聞き応えを感じさせてくれる曲です。

恐らく,歴代の大河ドラマのテーマ曲の中でももっとも歌いやすく覚えやすい曲の一つでしょう。サウンド・トラック盤の演奏は広上淳一指揮NHK交響楽団で,テノール独唱は言うまでもなくジョン・健・ヌッツォでした。ジョン・健・ヌッツォはこの年,この曲で紅白歌合戦にも出演しました。

●メイン・テーマ紀行バージョン
番組最後の「紀行」の部分では,ゆっくりとしたテンポでメインテーマが演奏されました。ここでもジョン・健・ヌッツオの歌が入りますが,すべてハミングで歌われます。最後は静かに結ばれます。(2005/02/10)