ハイドン Haydn

■交響曲第1番ニ長調Hob.I:1

「交響曲の父」と呼ばれるハイドンの記念すべき第1番の交響曲です。ただし,本当に「第1番」かどうかは不明です。ハイドンは有名なエステルハージ侯爵に仕える以前(1761年以前)にモルツィン伯爵に仕えていました。この第1番は,そのモルツィン時代の1759年以前に作られています。最初期の作品であることは確実なのですが,他にもこの時期に書かれた曲が14曲あるという説がありますので,「第1番」とは言い切れないということになります。

曲は急−緩−急の3楽章構成です。イタリアのオペラ・シンフォニアに由来した形式となっています。

第1楽章 プレスト,ニ長調,4/4,未発達なソナタ形式
曲は急速なテンポで徐々に音が大きくなるような第1主題で始まります。ホルンがワクワクとした信号音で応えながら生き生きと進みます。オーボエとヴァイオリンによる第2主題も気分はそれほど変わりません。属調(イ長調)で呈示された後,一瞬短調となり,呈示部を終わります。

展開部はそれほど目立った動きはなく,経過部的な動きは続きます。再現部は第2主題の一部が省略される以外は呈示部の再現となります。

第2楽章 アンダンテ,ト長調,2/4,展開部と再現部が未分化な2部分ソナタ形式
この楽章は弦楽合奏のみで典雅に演奏されます。第1主題は穏やかな気品をたたえたものです。短い経過部の後上下の動きと3連符を含む第2主題が属調(ニ長調)で呈示されます。この部分も短調に変わった後,簡潔に前半が終わります。

後半は属調による第1主題の提示と再現が合わさったような感じで始まります。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが応答するようにして進んでいきます。その後,本来の再現部となり,小結尾となって楽章が結ばれます。

第3楽章 プレスト,ニ長調,3/8,ソナタ形式
第1楽章,第2楽章はまだ発達途上のソナタ形式で書かれていたのですが,この第3楽章は短いながらも正規のソナタ形式で書かれています。6小節ずつの第1主題,第2主題はともに3拍子のリズムに乗った楽しげなものです。展開部は属調に変型された第1主題で始まります。再現部も型どおり行われ,きっちり明快に結ばれます。(2005/05/28)