ハイドン Haydn

■交響曲第100番ト長調「軍隊」

ハイドンは100曲以上交響曲を作っていますが,この軍隊交響曲は,いわゆる「キリ番(?)」ということで,全体ににおめでたい雰囲気の曲となっています。ニックネームの由来となっているとおり軍隊ラッパのような音形がそのまま出て来たり,大太鼓,シンバル,トライアングルと鳴り物が賑々しく活躍します。ただし,騒々しいだけではなく,しっとりとした雰囲気や充実感のある響きもあり,円熟期のハイドンらしい,完成度の高いとなっています。このニックネームは,ハイドンの時代からこう呼ばれていたものです。ただし,この軍隊風というのは当時流行していたトルコ風ともいえそうです。

第1楽章
アダージョの序奏がついています。その後半で短調に変わり,緊迫した雰囲気になります。半終止の後,テンポがアレグロに変わり,主部に入っていきます。まず,オーボエとフルートによる可憐な感じのメロディが出てきます。この主題がいろいろな楽器で繰り返されます。第2主題は軽やかなリズムに乗ってヴァイオリンによって楽しげに演奏されます。展開部でもこの第2主題の展開が中心になっています。第1主題は中央部で短調で1度だけ出てきますが,非常に効果的な使い方です。再現部は,さりげなくフルートによってはじまります。この再現部は提示部よりは少し省略されています。第2の展開部のような立派なコーダで楽章は締められます。

第2楽章
2/2拍子のアレグレット。3部形式です。まず,弦楽器とフルートで,続いて木管五重奏でのどかな感じの主題が演奏されます。中間部ではトライアングル,シンバル,大太鼓と打楽器が派手に加わりオーケストラ全体でこの主題が短調で演奏されます(こういう部分をミノーレといいます。)。緩叙楽章で打楽器が出てくるのは異例のことですが,初演当時の聴衆も驚いたことと思います。ここでは音のダイナミックスの変化が楽しめます。再度,最初の長調の部分が,戻ってきますが,今度は打楽器とフルート以外の全楽器で演奏されます。その後,突如,軍隊信号が鳴り響きます。これは,メンデルスゾーンの結婚行進曲やマーラーの交響曲第5番の冒頭と同じ音形で始まります。その後,フルオーケストラで変イ長調の和音が鳴ります。この効果も見事です。その後,何もなかったかのように元の雰囲気に戻ります。

第3楽章
軍隊の雰囲気とは打って変わって3/4拍子の優雅なメヌエットです。中間部では,ヴァイオリンのメロディの上にフルートとオーボエが軽やかに動くような主題が演奏されます。

第4楽章
6/8拍子のプレスト。ソナタ形式です。弦楽器が軽やかに動きまわる第1主題と装飾音符のついたおどけた感じの第2主題という対照的な主題が提示されます。この両主題が組み合わされて巧みに展開された後,再現部になります。ここでは,第2主題が出てくる時に,2楽章に出てきた軍楽隊用の打楽器が加わります。コーダでもこれらの楽器が華々しく活躍し,曲全体がビシっと結ばれます。(2001/11/10)