ハイドン Haydn

■交響曲第104番ニ長調,Hob.1-104「ロンドン」

ハイドンは100曲を超える交響曲を作曲しています。その最後の曲です。そのことが示すとおり,ハイドンの交響曲の到達点を示す傑作となっています。ただし,タイトルの「ロンドン」というのはほとんど意味のないものです。この曲がロンドンで作曲されたのでそう呼ばれているのですが,そうなると「ザロモン・セット」と呼ばれている,ハイドンの最後の12曲(第93〜104番)は全部「ロンドン」ということになってしまいます。「とっても立派な曲なのに無名なのは惜しい」「偉大なハイドンの最後の曲だ」「この際,この曲に代表してもらおう」ということなのかもしれません。

第1楽章
序奏部とソナタ形式の主部からなっています。序奏は,ニ短調のユニゾンで堂々と始まります。ハイドンの交響曲中もっとも威厳のある序奏といえそうです。

続いて,アレグロの主部に入ります。第1主題は穏やかな品のよい流れを持った親しみやすいメロディです。その後,フォルテによるダイナミックな感じの部分になります。この主題の展開が続いた後,イ長調の第2主題がフルートを中心に軽いリズムに乗って出てきて呈示部が終わります。展開部は,この両主題をもとに様々な転調が行なわれてます。「トントントントン・ターラ」という動機が繰り返し登場するのが印象的です。再現部は,呈示部を少し展開したような形になっています。その後,簡潔なコーダが付いて第1楽章が終わります。

第2楽章
アンダンテの3部形式の楽章です。最初の穏やかな主題は何回か繰り返されます。中間部はこの主題がト短調になって登場し,ダイナミックに展開されます。再現部も最初の主題が少し変奏されたような形になっています。この楽章は,変奏曲風の3部形式となっていますが,このパターンは晩年のハイドンが好んだものです。

第3楽章
アレグロのテンポの快活なメヌエットです。全体に素朴なドイツ舞曲風です。中間部は,さらにのんびりした素朴な雰囲気になります。

第4楽章
親しみやすく覚えやすいメロディの第1主題がスッと登場します。このメロディを演奏している間,チェロとホルンが「レー」と同じ音を低音で引き伸ばしているのも印象的です(ドローン・バスといいます)。この部分の後,新しい動機と第1主題の動機をもとにした長い経過部が続きます。第2主題は弦楽器の2分音符の音の動きによるもので,呈示部の最後の方に出てきます。

展開部では,第1主題の動機,経過部の動機,第2主題の動機の順に引き締まった雰囲気で展開されます。再現部では,第1主題の再現は簡潔なものになっています。第2主題の再現については,フルートのオブリガートが加わっているのが印象的です。最後にいろいろな動機が新しく展開される立派なコーダになります。素材を見事に展開し,構成した非常に見事なフィナーレとなっています。(2002/07/16)