ハイドン Haydn

■交響曲第6〜8番「朝・昼・晩」三部作

ハイドンの初期に書かれた交響曲の中では,ネーミングの面白さもあって,いちばんよく知られているのが,この「朝」「昼」「晩」の三部作です(3曲で70分ほどなので,3曲まとめてCDに収録するのにもぴったりです)。この3曲は交響曲とはいえ,独奏楽器が多用されていますので合奏協奏曲に近い形式を取っています。曲のムードからはディヴェルティメントに近い雰囲気も感じられます。

この曲を作曲した当時,ハイドンはエステルハージ侯爵家の副楽長を務めていましたが,この曲のソロパートの充実ぶりを聞くと,そのオーケストラの技術的な水準の高さが推測できます。バロック時代から古典派への移行時期に作られた,交響曲らしくない交響曲ということで,現代からみるとかえってとても新鮮な特徴を持った曲集となっています。

■交響曲第6番ニ長調,Hob-I-6「朝」
第1楽章
(アダージョ→アレグロ ニ長調,4/4→3/4,ソナタ形式)
日の出の雰囲気を伝えるように,ゆったりと徐々に明るくなっていくアダージョの序奏に続いて,アレグロの主部になります。この気分の転換は実に鮮烈で見事です。爽やかな主題を演奏するのはフルートです。その後をオーボエが引き継ぎます。この主題は朝の気分にぴったりです。この主題は楽章中に何回も登場し,統一感を作っています。第2主題は経過的で短いものです。展開部も経過的なもので第1主題を中心に取り扱われます。再現部は規模が縮小されています。ホルンの信号に続いて,フルートが出てきて再現部になります。爽やかな雰囲気が一貫する楽章です。

第2楽章(アダージョ−アンダンテ−アダージョ,ト長調)
緩−急−緩のフランス風序曲のような構成を取る楽章です。

序奏部分では独奏ヴァイオリンがレチタティーヴォのように活躍します。この曲ではその後も独奏ヴァイオリンが大活躍しますが,このパートはハイドン自身が指揮をしながら演奏したと考えられています。その後のアンダンテの部分は3/4となり,優雅な主題を独奏ヴァイオリンが演奏します。独奏チェロがそれに応えるようにして進んでいきます。第2主題はより歌うような雰囲気になります。この部分はソナタ形式で書かれており,この2つの楽器を中心に展開された後,また最初の優雅な主題が戻ってきます。

最後にまた,序奏部と同じアダージョに戻ります。最初の部分よりはいろいろな素材が付け加えられています。静かでひっそりとした気分に包まれて終わります。

第3楽章(メヌエット,ニ長調,3/4)
ニ長調のメヌエットとニ短調のトリオから成る楽章です。各部分それぞれ3部形式で作られています。独奏楽器がここでも活躍しますので,協奏曲的な雰囲気もあります。

メヌエット主題はフルートが中心となって演奏され,トリオの主題は独奏ファゴットと独奏チェロとで室内楽のように演奏されます。この2つの部分は見事な対比を作っています。

第4楽章(フィナーレ,アレグロ,ニ長調,2/4,ソナタ形式)
音階を駆け上っていくような爽快な第1主題がまずフルートで演奏されます。この主題は第1楽章の第1主題と呼応しているようです。フルートの後,いろいろな楽器で引き継がれて行きますので,シンフォニー・コンチェルタンテのような雰囲気があります。第2主題はオーボエで始まりますが,ここでもフルートに引き継がれて行きます。展開部もソロ楽器が次々と活躍します。この気分のまま続いたまま,再現部となり,軽快なペースのまま全曲が結ばれます。(2003/11/08)