ハイドン Haydn

■チェロ協奏曲第1番ハ長調,Hob.VIIb-1

しばらく前まで,ハイドンのチェロ協奏曲第1番は,その存在だけが知られ,楽譜は現存していないと思われていたのですが,1961年にプラハで楽譜が発見され,一気に知られるようになった作品です。200年ほども貴族の文庫や図書館で眠っていたことになります。

作曲されたのは,1765〜67年頃で,ハイドンが楽長を務めていたエステルハージ家の宮廷楽団のチェロ奏者のために書かれています。第2番よりはバロック音楽の痕跡を残していますが,チェロが開放的で明るく鳴り響き,チェロのレパートリーとして定着しています。3楽章を中心とした,技巧的な華やかさも聞きものです。

第1楽章
協奏風ソナタ形式の楽章ですが,ソロとトウッティを鋭く対比させており,バロック時代のリトルネロ形式の痕跡が残っています。まず,オーケストラのトゥッティで元気の良い第1主題が演奏されます。第2主題は第1ヴァイオリンを中心とした緩やかに下降していくものです。再度,トゥッティで小結尾のメロディが演奏されて,オーケストラの呈示部が終わります。続いて,独奏呈示部になり独奏チェロが活躍します。

展開部では,まず属調で両主題と小結尾のメロディが演奏されます。続いて独奏チェロが技巧的に呈示部の素材を発展させていきます。再現部も独奏チェロ中心に進行します。カデンツァの後,トゥッティによる華やかなコーダで結ばれます。

第2楽章
3部形式。独奏チェロと弦楽器のみによる静謐で叙情的な楽章です。まず,弦楽合奏で2つの主題が呈示されます。この旋律を独奏チェロが拡大していきます。中間部では短調になり,翳りを見せます。同時に独奏チェロの技巧の見せ場を作ります。最初の部分が再現された後,作曲者自身による短いカデンツァが演奏され,楽章が結ばれます。

第3楽章
第1楽章と同様,バロック音楽の痕跡を残す,協奏風ソナタ形式で書かれています。歯切れの良いリズムに乗った第1主題と素材的には第1主題と関連のある第2主題がオーケストラで演奏された後,独奏チェロと弦楽器を中心とした独奏呈示部が続きます。小結尾だけはトゥッティになります。展開部も独奏チェロと弦楽器による前半とトゥッティによる後半から構成されます。再現部は再度,独奏チェロと弦楽のみになり,トゥッティによる短いコーダで結ばれます。全体にスピード感に溢れ,チェロの非常に高度な技巧を味わうことのできる楽章となっています。(2003/03/25)