ハイドン Haydn

■チェロ協奏曲第2番ニ長調,Hob.VIIb-2

ハイドンが楽長を務めていたエステルハージ家の宮廷楽団の第1チェロ奏者のアントン・クラフトのために書かれた作品です。長い間,この曲はクラフトが作曲した作品とみなされていましたが,1954年に自筆譜が発見され,ハイドンの真作であることが判明しましたた。あまりに高度な技法が取り込まれているので「怪しい」と思われていたのですが,現在では,ハイドンの先進性を示す事例といわれています(ただし,クラフトの助言は取り込まれているようです)。現在では,ボッケリーニのチェロ協奏曲と並んで,古典派チェロ協奏曲の2大スタンダードとなっています。

第1楽章
協奏風ソナタ形式の楽章です。まず,弦楽器のみで親しみやすい第1主題が歌われます。第2主題はオーボエとヴァイオリンで優雅に呈示されます。この楽章の2つの主題はどちらもとても魅力的で,旋律的なものとなっています。最後に第1主題の冒頭の動機が出てきて,オーケストラの呈示部が結ばれます。

続いてソリストによる呈示部になります。こちらの方では,より装飾的に歌われます。先に述べた通り,高度な技法が駆使されます。展開部でも,独奏チェロが主体となって進みます。再現部も独奏チェロが中心です。カデンツァの後,第1主題冒頭の動機が出てきて,結ばれます。

第2楽章
3部形式(または小ロンド形式)で作られています。オーボエと弦楽器による簡素な伴奏の上に,独奏チェロによる抒情的なメロディが出てきます。ここでも魅力的な旋律が次々と登場し,独奏チェロが静かに歌います。

第3楽章
ロンド形式で書かれています。まず,独奏チェロが軽快なロンド主題を弾き始め,オーケストラがこれを繰り返します。ロンド主題の間にはさみ込まれる第1エピソードは,独特なリズムを持つ,独奏チェロによる技巧的なパッセージです。ロンド主題が出てきた後,短調に変わり第2エピソードとなります。ここでも協奏曲にふさわしい華やかな技巧を呈示します。曲は長調に戻り再度ロンド主題が出て来ます。簡潔で快活なコーダで全曲は結ばれます。

この楽章では,オクターブの重音での上下動,速いパッセージ,極端な音の跳躍など次々と難技巧が登場します。この曲は,古典的なバランスと名技性とが共存する,大変魅力的な曲といえます。(2002/7/16)