オネゲル Honegger

■交響詩「夏の牧歌」 Pastorale d'ete

オネゲルは,プーランク,ミヨーといった同世代の作曲家たちと「フランス6人組」という若手作曲家グループを作っていました。その中ではバッハ,ベートーヴェン,ワーグナーなどを愛していたという異色の作曲家がオネゲルです。そのオネゲルが28歳の夏にスイスで作曲した叙情的な小品が,この「夏の牧歌」です。アルチュール・ランボーの「夏の暁を抱いて」という本の題辞にインスピレーションを受けて作曲したといわれています。

オネゲルのまだ若い時期の作品ということで,後年の無機的な鋭さを秘めたようなオネゲルらしさはありませんが,かえって,その暖かい叙情性によって親しまれる作品となっています。オーケストラの編成もフルート,オーボエ,クラリネット,ファゴット,ホルン各1名+弦楽四重奏(または弦楽合奏)というこじんまりとしたものです。

曲は3つの部分から成っています。第1部は揺れるようなリズムの上にホルンがのどかな牧歌を奏でるように始まります。弦楽器が息の長い旋律を歌い,小鳥のささやきのような音型も盛り込まれています。

第2部はクラリネット,フルート,ファゴットが民族舞曲風の新しいメロディを出し,これがいろいろな楽器に受け継がれて進んでいきます。

第3部では最初ののんびりとしたリズムが戻ってきて,これまでの素材が総合されて再現されます。夕闇を告げるような静かなコーダで全曲が結ばれます。

(参考)オネゲル交響曲全集(セルジュ・ボド指揮)のCDの解説(結城享氏によるもの)
(2005/04/03)