フンメル Hummel

■トランペット協奏曲ホ長調(変ホ長調)
フンメルはベートーヴェンと同時代の作曲家です。モーツァルトからはピアノを習い,ハイドンからはオルガンを習う,という恵まれた人だったのですが,今となっては「知る人ぞ知る」という感じの作曲家になっています。そのフンメルの代表作がこの作品です。トランペット協奏曲の中では,ハイドンのトランペット協奏曲と並んで有名な曲となっています。この両曲はともにアントン・ワイディンガーという奏者のために書かれています(ちなみにフンメルは,ハイドンの後を継いでエステルハージー侯の宮廷楽長を務めています)。

フンメルはピアニストとしても有名ですが,この曲も作曲当時のウィーンでよく聞かれた軽快で流麗なピアノ協奏曲の雰囲気を伝えるような魅力を持っています。トランペットの独奏パートには半音階や装飾音がふんだんに使われています。これは当時発明された「キー付きトランペット」の使用の成果と言われています。

なお,この曲のオリジナルは「ホ長調」なのですが,現在では演奏しやすい変ホ長調に移調されて演奏することが普通になっています。

第1楽章 アレグロ・コン・スピリート
序奏に続いて独奏トランペットが入って来ます。全体に勇壮で軍隊調の雰囲気を持っています。序奏の雰囲気はモーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」とそっくりで思わず笑ってしまいそうです。主部に入ると独奏トランペットが「ドミソドー」と爽やかに入ってきます。その後,オクターブ音が下がり,ちょっとユーモラスでのどかで朗らかな感じで曲は進んでいきます。しばらくすると,はずむような感じの第2主題が出てきます。

展開部も同様のペースで進んだ後,再度「ドミソドー」とトランペットが入ってきて再現部になります。途中でしっとりした雰囲気になりながらも滑らかに進んでいきます。カデンツァが入った後,コーダとなり快活な気分のまま楽章を終わります。

第2楽章 アンダンテ
ウェーバーの協奏曲などと似た楽章で,初期ロマン派の香りを感じさせてくれます。モーツァルトのピアノ協奏曲第21番の有名な第2楽章と似た感じの低音の伴奏の上に独奏トランペットがメランコリックな歌を歌っていきます。オペラのアリアを聞くような伸びやかさが魅力的です。途中、気分が少々変わり,しんみりとした感じになりますが,低音の伴奏はずっと続いています。その後,深刻な雰囲気になりますが,突如,トランペットが軽快に走りだし,そのまま第3楽章に入っていきます。

第3楽章 ロンド(アレグロ・モルト)
前楽章から切れ目無くアタッカで演奏されます。「タカ,タッタカ」というリズムが大変気持ちの良いロンド主題がまず出てきます。その後も親しみやすい楽想が続きます。途中,短調の魅力的な主題が出てきますが,曲の疾走感は続いたままです。その後,トランペットの技巧的なパッセージが続き,オーケストラとトランペットが掛け合いをするように進み,明るく全曲が結ばれます。(2003/10/28)