イベール Ibert
■アルトサクソフォーンと11の楽器のための室内小協奏曲

アルトサクソフォーン協奏曲としては,もっともよく知られている作品の一つです。1936年にドイツのラッシャーというサクソフォン奏者のために作曲された曲なのですが,実際は「サクソフォーンの神様」と呼ばれることもあるマルセル・ミューズに試奏してもらい,その意見を取り入れて作曲されています。

題名には「11の楽器」という言葉が入っていますが,これは次の楽器を指します。フルート,オーボエ,クラリネット,ファゴット,ホルン,トランペット,ヴァイオリン(2),ヴィオラ,チェロ,コントラバス。"Concertino da camera"という名のとおり室内楽編成のための協奏曲となっています(実際には弦楽器がもう少し増強されることもあります)。同じイベールのフルート協奏曲よりも編成,時間ともに小規模ですが,その分とてもよくまとまった感じの曲となっています。

曲は3つの楽章から成っていますが,最後の2つの楽章は続けて演奏されます。

第1楽章
明快なソナタ形式で書かれています。不協和音を含む短い序奏に続いて,躍動的な第1主題がサクソフォーンに出てきます。すっと爽やかな空気が入ってくるような鮮やかな出だしです。第2主題は穏やかなもので,対照的な気分を持っています。全体に明るい気分と活気に溢れた楽章となっています。

第2〜3楽章
通常の協奏曲の緩叙徐楽章と終楽章がアタッカでつなげられた形を取っています。最初にサクソフォーンのソロで暗く沈んだようなメロディが出てきます。しばらくしてオーケストラが弱音で加わってきます。オーボエやクラリネットなどにメロディが出てきて,それをサクソフォーンが受けた後,無窮動風の華やかな第3楽章になります。第1楽章の気分に戻ったような感じです。途中,カデンツァが入り,たっぷりとサクソフォーンの技法を聞かせた後,再度,速い音の動きに戻り,快活なムードのまま全曲が結ばれます。(2004/04/04)