池辺晋一郎 Ikebe
■悲しみの森:オーケストラのために

この曲は,1997〜1998年にかけてオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のコンポーザー・イン・レジデンスを務めていた池辺晋一郎が1998年に作曲した曲です。初演は,1998年9月に岩城宏之指揮OEKによって行われています。そして,この年の尾高賞を受賞しています。

この時のプログラムに書かれた池辺氏による曲目解説によると「この曲は,どの森も,そして森のいかなる状態をも描写していないが,まるで森を歩くかのように作曲した」とのことです。この「悲しみの森」というタイトルは,環境破壊問題を意識して付けられています。

なお,この曲目解説は,「畏敬する岩城宏之氏とオーケストラ・アンサンブル金沢のために,かなりプレッシャーを感じつつ作曲した」と結ばれていますが,このプレッシャーというのは,次のようなジンクスがあったことによります。実は,池辺氏の前任,前々任のコンポーザー・イン・レジデンスは,それぞれ黛敏郎と武満徹で,両者ともその在任中に作品を書き上げることなく亡くなっているのです。池辺氏は,このジンクスを破り,尾高賞を受賞したことになります。

この曲はCD録音されていますが,その演奏は岩城宏之指揮NHK交響楽団によるものです。(2002/5/18)