レハール Lehar
■ワルツ「金と銀」op.79 Gold und Silber, op.79

レハールはハンガリー生まれの作曲家ですが,多くのウィーン風オペレッタを書いています。そのレハールが書いたウィーン風ワルツといえば,「メリー・ウィドゥ」の中のワルツが有名ですが,単独のワルツでは,この「金と銀」が最も有名です。恐らく,シュトラウス・ファミリー以外のワルツの中では,最も有名な曲でしょう。レハールの作品に限らず,あらゆるワルツの中でも最もゴージャスで優雅な気分に溢れた作品です。どこか「嬉し恥ずかし」といった懐かしい気分を感じさせるような親しみやすさがとても魅力的です。タイトルの「金と銀」の由来はよく分かりませんが,そのゆったりとした優雅なメロディ・ラインにはぴったりです。

曲は,何かを期待させるような華やかで表情豊かな序奏で始まります。静かに落ち着いた気分になったあと,力強く盛り上がり,ワルツの主部に入っていきます。このメロディは「ソドーレミ..」と上昇する感じで始まりますが,この音の動きは,「浜辺の歌」など日本の歌曲と共通する要素もあります。日本人にとってとても親しみやすく感じられるのはそのことも理由の一つかもしれません。

一呼吸入れた後,低弦で豊かに歌われるメロディは大変有名なものです。自然な起伏を持ったメロディは,一度聞けば忘れられない親しみやすさを持っています。

その後も続々と美しいメロディが湧いて出てきます。曲の途中,ところどころ,ダイナミックに曲は盛り上がります。聞いているうちに,どこか昔懐かしい遊園地の乗り物に乗って遊ぶような素朴な気分にさせてくれます。

最初のワルツが再現した後,コーダになり,慌てて家に戻るような感じで楽しく全曲が結ばれます。

この曲の演奏では,音楽評論家の宇野功芳氏が非常に高く評価しているルドルフ・ケンペ指揮ドレスデン国立管弦楽団による「ジルベスター・コンサート」と題されたアルバムに含まれた演奏が素晴らしい演奏です。曲が進むにつれてどんどんと立派な雰囲気になってきます。(2005/01/06)