リスト Liszt

■巡礼の年

リストはピアノ曲を沢山書いていますが,その中でもいちばん大規模な作品集がこの「巡礼の年」です。全4集・合計26曲から成っています。この曲集はリストがスイスとイタリア旅行をして得たインスピレーションを基に書かれています。一種の旅行印象記といえます。「巡礼の年」というタイトルがついているとおり,リストの作品に内面的な深みが加わってくるようになった時代の作品です。各曲集の概要は次のとおりです。

  • 第1年「スイス」S.160 1848-1854年作曲 全9曲
  • 第2年「イタリア」S.161 1837-1839,1849年作曲 全7曲
  • 第2年補遺「ヴェネツィアとナポリ」S.162 1859年作曲 全3曲
  • 第3年 S.163 1867-1877年作曲 全7曲
■巡礼の年第3年
巡礼の年第3年はこれまでの三集と違い,リストが晩年になってから自由に題材を選んで作曲したものです。リストは晩年,演奏活動から引退し,エステ荘で僧職に入りながら,作曲活動を続けています。そういう時期に書かれたのがこの作品集です。そのことを反映して,枯淡の境地・宗教的色彩が感じられる作品集となっています。

第3曲「エステ荘の噴水」
エステ荘にある噴水を描いた作品です。水のある風景を音楽で描いた曲ということで,後のフランス印象派のピアノ曲に大きな影響を与えた作品と言われています。

曲はキラキラときらめく水の雰囲気を伝えるような高音の弱音のアルペジオとトレモロの連続で始まります。それが微妙に変化して行きます。ラヴェルの「水の戯れ」などと同様,水が動く様子を美しく表現しています。途中,中音域に歌うようなメロディが出てきて,高音のキラキラ輝くような装飾音と美しく絡みます。

曲は徐々に盛り上がりを見せ,強靭な音でクライマックスを築きます。その後,再度高音を中心としたキラキラとした音が中心となり,徐々に静かな雰囲気になって曲は結ばれます。
(2004/06/23)