リスト Liszt

■メフィスト・ワルツ

リストがワイマールで暮らしていた全盛期の後半に作曲されたオーケストラ作品です。題名どおり,「ファウスト」にインスパイアされて作曲されたものですが,原作はゲーテのものではなく,ニクラス・レーナウの長編戯曲詩です。

リストはメフィスト・ワルツと呼ばれるオーケストラ曲を2曲作っています。第1番が「夜の行列」,第2番が「村の居酒屋の踊り」です。このうち圧倒的に有名なのが第2番の方です。この曲は,ピアノ独奏用に編曲された版でもよく知られています(通常は,ピアノ曲をオーケストラ用に編曲することが多いので,この曲もオリジナルがピアノ曲だと間違われることもあります。)

ピアノ独奏用のメフィスト・ワルツの方は全部で4曲あります。その第1番が「村の居酒屋の踊り」です。その他の3曲は次のような曲です。第2番は別の管弦楽曲からの編曲,第3番はオリジナルのピアノ曲,第4番は未完の作品となっています。

●村の居酒屋の踊り
メフィストフェレスがファウストを伴って居酒屋に現れる場を描写的に描いた曲です。

まず,田舎楽士たちがヴァイオリンを調律する様子が不気味な不協和音の連続で描かれます。アクセントの付け方にもどこか悪魔的な雰囲気があります。その後,メフィストフェレスがヴァイオリンを取り上げ,楽しげな速い3拍子踊りの音楽になります。少し狂気に満ちた音楽に乗って,村人たちのお祭り騒ぎが始まります。この騒ぎがしばらく続いた後,静けさが戻ってきます。

そこで出てくるのはマルガレーテ(グレートヒェン)の姿を描写しています。この部分がしばらく続いた後,再度メフィストの悪魔的なヴァイオリンが戻ってきます。最後はファウストは村の娘と連れ立って森の中へ消えて行きます。コーダの激しいパッセージは,メフィストのあざ笑いを描いているようです。(2004/06/22)