リスト Liszt

■ピアノ協奏曲第1番変ホ長調

リストはピアノ曲を沢山残していますが,ピアノ協奏曲は2曲しか書いていません。その中でこの第1番はピアノの華やかな技巧が前面に出た親しみやすさを持っているため,第2番に比べて圧倒的に演奏される機会の多い作品となっています。

この曲は一応4つの楽章から成っていますが切れ目無く演奏されますので,単一楽章の幻想曲風の曲となっています。さらに各楽章の主題が第1楽章の最初の主題を基に循環形式のように相互に関連付けられていますので,凝縮されたようなまとまりの良さがあります

この曲はワイマールで1849年に作曲され,1852年にリスト自身のピアノで初演されています。このときは「あまりにも軽い曲だ」というハンスリックの攻撃を受けています。そのとき,「トライアングル協奏曲」という辛辣な皮肉を込めたニックネームをつけられましたが,第3楽章を聞くとこのニックネームもなるほどと思わせる部分もあります。

全曲を通じて,ピアノの巨匠的な活躍に対するオーケストラの迫力も印象的です。オーケストラ対ピアノのマッシブな格闘も楽しめる作品です。

第1楽章
弦楽器で力強くシンプルな第1楽章が呈示された後,ピアノがオクターブのユニゾンで登場し,すぐに華々しいカデンツァを演奏します。この冒頭の主題は以後何度も出てくる全曲の基本となる主題です。有名なピアノ協奏曲はどれも印象的な出だしで始まりますが,この曲の率直な出だしもグリーグ,チャイコフスキーなどに負けない魅力を持っています。しばらくしてクラリネットに導かれてピアノに美しい第2主題が出てきます。この部分は第1主題と対照的に非常にメランコリックです。

その後はソナタ形式に従いながらも,自由な雰囲気で進んで行きます。冒頭の力強い基本テーマが何回も何回も楽器を変えて,いろいろな表情で出てきますが,最後はピアノの半音階的上昇で静かに終わります。

第2楽章
弱音器をつけた弦楽器によってこの楽章の主題の断片が演奏されます。その後,ピアノが登場して夜想曲風に主題を歌います。この主題も第1楽章の主題と関連があります。レシタティーフと記された部分ではチェロとピアノが劇的なやりとりを交わします。その後,カデンツァをはさみ,フルートをはじめとした木管楽器で優美で爽やかな副主題が演奏されます。その間,ピアノはずっとトリルを続けています。

第3楽章
スケルツォに当たる楽章です。ここでは上述のとおりトライアングルが大活します。ピアノはカプリチオーソ・スケルツァンドで軽妙に入ってきてトライアングルと応答を繰り返します。この主題も第1楽章の基本主題と関連があります。この応答が次第にラプソディックに盛り上がり,その後,力強く第1楽章冒頭のフレーズが再現します。さらに華麗に盛り上がった後,第4楽章に続いていきます。

第4楽章
ピアノの下降する音型と木管楽器を中心とした行進曲調の軽快な主題で始まります。その後,第2楽章,第3楽章に出て主題も加え,華麗なピアノの活躍とともに,第1楽章の基本主題による圧倒的な高潮をもって全曲のクライマックスが築かれます。(2005/06/04)