メンデルスゾーン Mendelssohn

■序曲「フィンガルの洞窟」
「フィンガルの洞窟」というのはスコットランド北西沖の大西洋にあるヘブリディース群島の中のスタッファ島にある洞窟です。この曲のドイツ語の原題は"Die Hebriden"となっているのはそのためです。この曲は,その付近の印象をもとに作曲した標題音楽で,メンデルスゾーンの作曲技法の粋が集められています。ワーグナーがこの曲を聞いてメンデルスゾーンのことを「一流の風景画家」と呼んだのは有名なエピソードです(実際,メンデルスゾーンは絵を描くのが得意だったようです)。

曲は,軽やかに岸に打ち寄せるようなロ短調のメロディで始まります。いろいろな楽器で繰り返され,次第にスケールアップしていきます。その上に,木管楽器で吹きすさぶ風や荒涼とした岩を思わせるような主題が出てきて,激しく盛り上がります。それが静まると,ファゴットとチェロで非常に静かに美しい歌うようなメロディが出てきます。

その後,第1主題を中心とした展開部が続き,クライマックスを築きます。再現部では提示部と違う楽器で演奏されます。特にクラリネットによる第3主題が非常に聞き応えがあります。終結部では第1主題が中心となって力強く終わります。(2003/03/01)