メンデルスゾーン Mendelssohn

■交響曲第4番イ長調,op.90「イタリア」
メンデルスゾーンは5曲の交響曲を書いていますが,そのうち特に有名なのが「スコットランド」とこの「イタリア」です。いずれもその土地を旅行した後に作曲されたものです。メンデルスゾーンは「音の風景画家」などと呼ばれますが,旅行の印象を曲にまとめたこの曲は,その面目躍如たるものがあります。北国の作曲家がイタリアに対する憧れを描いた曲はたくさんありますが,そういう作品の代表ともいえます。

メンデルスゾーンの曲はどの曲も大変メロディが美しく親しみやすいのですが,この曲はそういうメンデルスゾーンの特質が大変よく表われています。初演時から大変好評で,愛すべき交響曲としてずっと親しまれ続けています。

第1楽章
弦楽器のはじけるようなピチカートに続き,木管楽器が「タタタタタタ」と細かいリズムを刻んで曲は始まります。その上にヴァイオリンが明るく躍動感のある印象的なメロディを歌い始めます。この部分を聞くだけでイタリア的な気分になります。このリズムと歌は1楽章を通じて続きます。木管楽器で出てくる第2主題の方はのどかな感じですが,やはり弾むような雰囲気があります。展開部では,短調の新しい主題も出てきますが,常に細かい音の動きがあるせいかそれほど深刻になりません。再現部も同様の調子が続きます。この楽章は,6/8拍子ですが,ビートの効いたノリの良い快適な音楽になっています。

第2楽章
「イタリア=明るい」と捉えられがちですが,意外に短調の部分の多い曲です。第1楽章の展開部もそうでしたが,この2楽章も短調になっています。弦楽器によるユニゾンの導入部に続き,巡礼の歩みを思わせる,歩くような速さの詩情のあふれるメロディが出てきます。これは中間部では長調になり,クラリネットなどを中心に穏やかなメロディを演奏します。絶えず低音部で対旋律を演奏しているせいか,とても聞き応えのある音楽になっています。

第3楽章
3/4の楽章ですが,メヌエットでもスケルツォでもありません。最初から流れるような主題が涌き出てきます。何とも言えない詩情にあふれた雰囲気は非常に魅力的です。中間部では特徴のあるリズムがホルンの美しい和音で演奏されます。楽章の最後に再度このホルンがエコーのように登場し,静かに閉じます。

第4楽章
サルタレロという当時流行したイタリアの舞曲の楽章です。「タッタ・タタタ」といった三連符を含むリズムが畳み掛けるように続く活発な楽章です。メンデルスゾーン版「ローマの謝肉祭」といえます。この楽章も短調ですが,そのせいか,かえってラテン系の熱い情熱のようなものが感じられます。この曲は,第1楽章は非常に明るく始まり,最後は短調で終わるのですが,こういう構成は意外に珍しいと思います。その辺がこの曲の不思議な魅力を生む理由の一つになっています。(2002/4/23)