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ミヨー Milhaud
組曲「スカラムーシュ」 Suite"Scaramouche"
ミヨーは,第1次世界大戦中,ブラジル公使となった詩人ポール・クローデルの秘書官として,ブラジルのリオ・デ・ジャネイロに出かけ,そこでサンバ,ショーロといった独特な民族音楽に触れました。そこから得たインスピレーションをもとに書かれた作品の代表がこの「スカラムーシュ」です。

「スカラムーシュ」という言葉は,コメディア・デラルテと呼ばれる伝統的なイタリア喜劇に登場する,臆病なくせに空威張りをする道化役のことです(ちなみにイタリア語では"スカラムッチャ(Scaramuccia)"と言います)。1937年に書いたモリエールの「空飛ぶお医者」という劇の付随音楽を基に構成した2台のピアノのための作品で,次の3曲から成っています。急−緩−急という配列ですので,組曲というよりは,小さなソナタのような感じです,

第1曲 ヴィフ Vif(速く):ウキウキとしたディアトニック(全音階)なメロディを中心に軽快なリズムに乗った上機嫌な音楽が続きます。
第2曲 モデレ Modere(中庸に):ブルース的な2つのメロディを持ち,メランコリックだけれども穏やかで美しい気分が続きます
第3曲 ブラジレイラ Brazileira(ブラジル女)サンバのリズムによる陽気なラテン音楽。中間部では2声の旋律が掛け合うように歌われます。

どの曲もポップでラテン的な陽気さが満ちていますが,中でもサンバのリズムを持つ終曲のブラジレイラの楽しさが印象的です。もともと児童劇のための作品らしく,メロディはシンプルですが,ミヨーらしく多調性やポリリズムといった前衛的な手法もさり気なく盛り込まれています。

この曲は,上述のとおり,2台のピアノのための版が原曲なのですが,1937年のパリ万国博覧会の際,ミヨーの友人のサクソフォーン奏者,マルセル・ミュールのためにサクソフォーンと管弦楽による版も作られています。こちらの版の方も,サクソフォーン奏者の基本的なレパートリーとして,よく演奏されていまます。
(2007/01/08)