モーツァルト Mozart

■ ヴァイオリンとオーケストラのためのアダージョホ長調K.261

ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219の第2楽章の遺稿と言われている作品です。他の協奏曲同様,ザルツブルクの宮廷楽団のヴァイオリン奏者のために書かれています。K.219では全楽章を通じてオーボエが使われていますが,この曲ではフルート2本がその代わりに使われています。これはオーボエ奏者がこの楽章ではフルートに持ち替えて演奏することを示しています。こういう楽器の使い方は当時は珍しくなかったといわれています。

アダージョの名のとおり,ヴァイオリンの歌が主体の甘美で典雅な緩徐楽章です。曲はソナタ形式で書かれています。トゥッティで大らかだけれども少し憂いを含んだ第1主題が呈示された後,独奏ヴァイオリンがそれを歌い継いで行きます。経過部の後の第2主題も弦楽器の連打に支えられた美しい歌です。

展開部は短いものですが,ロ短調に変わりスパイスを効かせます。既出のメロディが出てこない展開部ですがこういう展開部の作り方は当時の緩徐楽章にはしばしば見られるものです。再現部では第1主題がpで再現されます。第2主題の後,カデンツァが入り,第1主題によるコーダであっさりと結ばれます。(2005/04/02)